目次
対象者の基本データ
病名 | 鬱病(うつびょう) |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約59万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
20年以上前に就職に対する不安や体重増加に対する悩みから市販薬を大量服薬し、救急搬送されたことがあったとのことです。
その後も10年程は精神科・内科へ通院を継続し、症状は緩和し、治療の必要もなくなり通院を中断。
仕事もフルタイムでこなし、日常生活においても支障のない日が続いていましたが、通院を中断してから8年程経過した頃、仕事のペースが急激に落ち、うつ状態が再発、徐々に増悪したため、再度通院を再開されました。
仕事はなんとか続けているものの、病欠も多く、就労の影響による日常生活への支障も大きく、将来への不安を感じていたところ、障害年金が受給できる可能性はないかと思い、ご友人の紹介で当事務所へご連絡を頂きました。
申請結果
今回の申請に当たっては重要なポイントが2点ありました。
①通院期間のブランク(社会的治癒期間)
②就労
これらのポイントについて、1つずつ解決していきます。
まずは1点目について、これまでの病歴をヒアリングした際に症状が緩和し、8年程通院を中断していた期間があったとお伺いしていました。
通常の請求では初めて医療機関を受診した日を初診日として申請します。
しかし今回の場合は、この通院していなかった約8年間は自覚症状もなく、日常生活・就労にも全く支障なく過ごせていました。
そのため、この期間を社会的治癒期間としてみなし、再発して再度通院を始めた日が初診日として認められる可能性がありました。(ポイント①)
また本来の初診日時点と再発後の初診日時点で加入されている年金制度が違ったこともあり、有利な初診日(社会的治癒を申立て、再発後の初診日)で申請を進めることを検討しました。
社会的治癒期間があると認められるために本来の初診日の確認や社会的治癒期間の前後の病院での受診状況の確認、またその時の状態を詳細にヒアリングを重ね、申請の準備を進めていきました。
医証だけでなく、その他客観的に見ても状態がわかるような書類を集めることが出来たため、おそらく社会的治癒は認められ得るだろうと考えていました。
次に2点目について、現在、制限や配慮があるとはいえ、フルタイムに近い形で就労されていたこともあり、就労が出来ているのであれば、ある程度の生活も送れているのでは?と症状も軽くみられてしまうおそれがありました。
実際の就労時の様子や就労後の状態等を詳細にお伺いしたところ、元気いっぱいに支障なく働けているわけではなく、1日1日がギリギリの状態でなんとか就労出来ており、就労の影響で帰宅後や休日は何も手につかず、日常生活能力は著しく低下している状態でした。
これらの就労状況を医師の診断書や病歴就労状況等申立書に出来る限り反映し請求を行いました。
請求の結果、通院期間のブランクがあった期間は社会的治癒期間として取り扱われ、再発後の初診日が今回の請求傷病の初診日として認められ、障害厚生年金3級として認定されました。
【ポイント1】社会的治癒
社会的治癒が認められると、初診日が変わります。
社会的治癒とは、「症状無し・生活に支障無し・就労可能な状態」が一定期間続いている場合などは、医学的には治癒とは言えなくとも治癒していると認めましょう!という制度です。
今回のケースのように「一度ケガや病気」となったが、しばらくの間問題なく生活していた後に「再度、症状が悪化・支障が出た」とき、最初のケガや病気は「治癒」その後「再発した」ものとして取り扱います。
障害年金上、再発した場合は「再発した後に初めて診察を受けた日」が初診日になります。
【ポイント2】精神疾患と就労
必ずしも「就労している=不支給」とは限りません。
とはいえ、精神疾患の場合は、審査上、就労の有無が重要なポイントとなってきます。
就労している継続年数や、就労形態についても審査では見られます。
就労している場合は、会社から受けている配慮や、帰宅後や休日の体調などを申し立てることも必要です。
たとえば、体調が悪化した場合の早退、通院のための遅刻や、その他、業務を行う上での配慮を受けていれば、そのあたりも記載します。
また、なんとかがんばって会社に行けても、帰宅した途端どっと疲れが出て寝込んでしまう場合や、休日は家事も一切できない場合なども、医師にしっかり伝え、診断書に反映していただくことも大切です。
障害年金と就労に関しては以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
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