【事例1754】特発性後天性全身性無汗症|障害年金の不支給の事例

特発性後天性全身性無汗症|不支給

対象者の基本データ

病名 特発性後天性全身性無汗症
性別 男性
支給額  
障害の状態
  • 体温調節ができず、夏場は熱中症のリスクが高いため屋外での活動が困難
  • 冬場は暖房の効いた室内での作業も困難
  • 障がい者手帳:なし
  • 短時間勤務も困難なため休職中
申請結果 不支給

当事務所スタッフによる事例紹介動画

当事務所のスタッフが実際に申請した流れを動画で詳しく説明しています。

当事務所の雰囲気を感じて頂けると思いますので、是非ご覧ください。

ご相談までの経緯

ご依頼者様は、全身の発汗低下を自覚し、度々、熱中症を発症するようになり皮膚科を受診しました。

発汗試験で難病の「特発性後天性全身性無汗症」と診断され現在まで薬物療法を続けていますが、皮膚の乾燥や痛み、蕁麻疹、体温調節困難による熱中症等の症状は改善せず、屋外はもちろんのこと、屋内でも温度調節の出来ない環境では容易に熱中症を発症し日常生活、就労ともに大きな制限があります。

ネットで障害年金のことを知り弊社に申請のご相談を頂きました。

「特発性後天性全身性無汗症」は患者数が100~200人ほどの珍しい傷病であり、弊社でも初めての事例となり認定の可能性についてお答えが難しいと伝えさせていただきましたが、チャレンジをしたいというご依頼者様の強いご希望があり契約となりました。

申請のポイント

「特発性後天性全身性無汗症」は難病であり、病状の経過、治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により総合的に審査されます。

そこで、診断書依頼の際に、就労や日常生活における支障について詳細な資料を作成し医師に橋渡しをしました。

完成した診断書には、「体温調節が不可能なため夏は屋内、冬は外でないと就労ができない。暑熱環境を避ける必要があり、日常生活同様に就労にも著しい支障がある」と記載されていましたが、認定の目安となる一般状態区分表の医師の判断はイとなっていました。

再度、医師に説明を致しましたが、全く就労が出来ないとは言い切れないので判断は変更できないとのことでした。(一般状態区分表につきましてはポイント①をご参照ください。)

診断書だけでは認定の可能性は低いと判断し、病歴就労状況等申立書に診断書からは読み取れないご依頼者様の辛い就労、日常生活状況について詳述しました。

結果

残念ながら、審査の結果は「不支給」となりました。

後日、認定調書を取り寄せたところ、不支給の理由は、「自己管理が可能である」というものでした。

自己管理が可能であると判断された背景には、年金機構がこの病気について十分に理解していない可能性があると感じました。

審査請求も考えましたが結果が翻る可能性が低いことと、症状が改善する可能性が低いという医師の所見より、ご依頼者様にとってはお辛いことですが就労が困難になった時点で再請求の方向を検討することに致しました。

感想

今回の事例は、特発性後天性全身性無汗症という非常に珍しい病気に対する障害年金申請の難しさを実感させられました。診断書書の記載内容が重要であることはもちろん、病気自体の認知度や理解度も大きな影響を与えることが分かりました。

私たちわくわく社会保険労務士法人では、今後もどんなに珍しい病気や難しい症状であっても、ご依頼者様のご希望に沿った申請を諦めずにサポートしていく所存です。この経験を糧に、より一層の知識と理解を深め、ご依頼者様の生活を支えるための障害年金取得に向けて全力で取り組んでまいります。

【ポイント1】一般状態区分表について

診断書によっては、一般状態区分表の記載が必要なものがあります。

主治医の先生が、次のア~オの中で該当するものを一つ選び〇で囲みます。

どれに該当するかが、審査の上では大きなポイントとなります。(アの場合は、不支給の可能性が非常に高いです。)

  • ア.無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
  • イ.軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行、軽労働や座業はできるもの(軽い家事、事務など)
  • ウ.歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
  • エ.身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出はほぼ不可能となったもの
  • オ.身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

【ポイント2】病歴就労状況等申立書

医証(受診状況等証明書、診断書など)には、ある一定の時点の情報しか記載されておらず、発症から現在までの全体の流れを読み取ることはできません。

これを補うために、「病歴就労状況等申立書」に、現在までの「病歴・治療歴」、「就労の状況」、「日常生活の状況」などを、5年ごとに区切って記載します。(転院した場合は、医療機関ごとに記載します。)

また、作成後は、医証との整合性も確認しましょう。

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