
療育手帳(りょういくてちょう)とは、知的障害のある方に交付される障害者手帳です。
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳と並ぶ3種類の障害者手帳の一つで、知的障害者向けの福祉サービスを受けやすくするための手帳になります。
療育手帳を持っていると、公的な支援を受ける際の「障害があることの証明書」として機能し、障害者総合支援法に基づく各種サービスや自治体・民間のサポートを受けやすくなります。
たとえば税金の控除や公共料金の割引を受けたり、障害者枠の求人に応募する際の証明書類として活用できます。
療育手帳の基本からメリット、申請方法までやさしく解説します。
療育手帳の概要
療育手帳の目的は、知的障害のある人が一貫した指導や相談を受け、各種の援助措置を受けやすくすることにあります。
療育手帳は、福祉サービスや各種割引・減免を利用する際に提示することで、受給・利用資格の確認に活用される手帳です。
療育手帳という名称は厚生労働省の定めた公式名称ですが、お住まいの地域によって呼び名が異なる場合があります。
例えば東京都や横浜市では「愛の手帳」、青森県や名古屋市では「愛護手帳」、埼玉県では「みどりの手帳」とも呼ばれています。
名称は違っても手帳で受けられる基本的なサービス内容は全国ほぼ共通です。
以下に主な名称の違いをまとめました。
| 地域(例) | 手帳の名称 |
|---|---|
| 多くの地域(大阪府・北海道・福岡県など) | 療育手帳 |
| 東京都、横浜市 | 愛の手帳 |
| 青森県、名古屋市 | 愛護手帳 |
| 埼玉県(さいたま市) | みどりの手帳 |
※療育手帳制度は国のガイドラインに基づきつつ各自治体が運用しているため、判定基準や手続き方法に細かな違いがあります。名称も自治体によって上記のように異なりますが、本記事では「療育手帳」に統一して説明します。
療育手帳の交付対象者は、原則として知的障害(知的発達症)があると判定された方です。
具体的には、18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所などで知能検査や面接による判定を受け、「知的障害がある」と認められた人が対象となります。
知的障害とは「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じるため特別な援助が必要な状態」と定義されています。
多くは子どもの頃に判明しますが、大人になってから知的障害と診断されるケースもあります。
その場合でも療育手帳を申請することは可能ですが、判定にあたって「18歳前後までにその障害が現れていた」ことを示す必要があります。
例えば母子健康手帳や学生時代の成績表(特別支援学級在籍の記録など)、過去の発達検査の結果といった資料の提出や聞き取りにより、生育歴を確認されることがあります。
発達障害の場合は取得できる?
発達障害のある方でも、知的障害を伴うと判定された場合は療育手帳の対象となり得ます。
一方、知的障害を伴わない場合は、一般的には療育手帳ではなく、日常生活・社会生活への制約の程度により精神障害者保健福祉手帳の対象となることがあります。
ただし、療育手帳の運用は自治体ごとに異なり、自治体によっては知的障害を伴わない発達障害でも一定条件で療育手帳の交付対象となる例外があります。
申請可否はお住まいの自治体基準で確認してください。
障害程度の判定基準と等級区分
療育手帳の判定は知能検査(IQ等)だけで決まるものではなく、日常生活での適応状況などを踏まえ総合的に判断されます。
判定は児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)で行われ、医師の診察や心理士による知能検査、本人・家族への聞き取り等によって知的障害の有無や程度を評価します。
基準の目安としては、IQがおおむね70以下(自治体によっては75以下)で、かつ日常生活や社会生活に支障がある場合に療育手帳の交付対象となることが多いとされています。
ただし判定基準の細部は自治体によって異なるため、境界領域の場合などは居住地の基準に従って判断されます。
療育手帳の等級(障害の程度区分)は、判定結果にもとづいて定められます。
国の通知上は障害程度を「重度(A)」と「それ以外(B)」に区分し、重度(A)の目安としてIQ概ね35以下(介助が必要/問題行動など)等が示されていますが、等級の細分化や運用は自治体により異なります。(参考:厚生労働省ホームページ『療育手帳制度の概要』)
例えば以下のような区分例があります。
- 東京都など:1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)の4区分
- 神奈川県など:A1(最重度)、A2(重度)、B1(中度)、B2(軽度)の4区分
- 兵庫県など:A(重度)、B1(中度)、B2(軽度)の3区分
自治体によって呼び方は異なりますが、概ね「A判定=重い障害」、「B判定=比較的軽い障害」という区分です。
療育手帳本体には判定結果として「A」または「B」(細分区分がある自治体ではA1やB2など)が記載されます。
等級区分によって、後述する受けられる支援内容や各種制度の対象範囲が変わることがあります。
「最重度」「重度」のA判定の場合は、より手厚いサービスや優遇措置が受けられるケースが多いです。
例えば税制上は、療育手帳A判定の方は「特別障害者」とみなされ、所得税・住民税の障害者控除額が通常より大きくなります。
自治体によっては重度の方向けに医療費助成やタクシーチケットの支給など追加の支援策を設けていることもあります。
お住まいの地域でどんなサービスが受けられるかは、後述の支援内容とあわせて自治体の窓口や公式サイトで確認してみてください。
療育手帳で受けられる支援内容(メリット)
療育手帳を取得する最大のメリットは、障害のある方やそのご家族が経済的・生活面的なサポートを受けやすくなることです。
療育手帳を提示することで、さまざまな公共料金や税金の減免措置、福祉サービスの利用券割引などを受けることができます。
また、企業の障害者雇用枠に応募する際には手帳が障害の証明となり、就職面での支援も得やすくなります。
ここでは代表的な支援内容・優遇措置を紹介します。
- 所得税・住民税の控除:所得税・住民税で障害者控除が適用され、特に療育手帳A判定(重度)の場合は「特別障害者控除」として控除額が増えます。
- 自動車に関する税の減免:一定要件を満たす場合、申請により自動車税(環境性能割・種別割)等の減免を受けられることがあります(対象者・対象等級・上限額などは自治体により異なります)。
- 医療費の助成:自治体によって、障害のある方の医療費自己負担を助成(無料化や上限設定)する制度があります。重度障害者医療費助成制度など、手帳A判定者を対象に医療費が減免されるケースが多くあります。
- 公共料金・公共施設の割引:電車・バス・JR・航空機など公共交通機関の運賃割引、有料道路(高速道路料金)の割引、NHK受信料の全額または半額免除、水道基本料金の減免などがあります。また、美術館・博物館・動物園など公共施設の入場料が無料または割引になり、付き添いの方1名まで同様の割引が受けられる場合もあります。
- 通信・住宅などのサービス:携帯電話の基本料金割引(各携帯キャリアで障害者手帳提示により基本使用料割引プランがあります)。そのほか、公営住宅(都営住宅・市営住宅など)の優先入居や家賃減額措置が設けられている自治体もあります。
- 就労支援サービス:障害者総合支援法に基づく就労移行支援や就労継続支援A型・B型といった就労支援事業所を利用できます。また、公共職業安定所(ハローワーク)の障害者窓口で職業紹介や職業訓練の案内を受けたり、地域障害者職業センターで職業評価や就職支援プログラムを利用することもできます。療育手帳を持っていると、これらのサービス利用がスムーズになり、必要な配慮を受けながら就労準備・職探しが進められます。
上記のように、療育手帳があることで生活全般にわたる幅広いサポートが受けられます。
ただし、具体的な内容はお住まいの自治体や所得状況、手帳の等級によって異なるため、「医療費助成は自治体ごと」「税の減免は所得制限あり」といったケースもあります。
実際に利用できるサービスの詳細は、交付時に配布されるガイドブックや自治体の障害福祉課窓口・公式サイトで確認すると良いでしょう。
療育手帳を持つことのデメリットは?
多くの方にとって、療育手帳のメリットは非常に大きいものです。
一方で「手帳を持つことで周囲に障害が知られてしまうのでは」と不安に感じる声もあります。
しかし療育手帳の所持は本人の任意であり、他人に見せない限り障害の有無が勝手に伝わることはありません。
手帳を使う場面(申請手続きや割引利用時)以外で提示する必要はなく、プライバシーは守られます。
また、申請しない限り役所から一方的に手帳が送られてくることもなく、取得後に「返納」(手帳を返してやめること)をすることも可能です。
強いてデメリットを挙げるとすれば、手帳の申請・更新の手続きに多少の手間と時間がかかることです。
申請には各種書類の準備や判定のための検査が必要となり、交付されるまでに通常1〜2ヶ月程度かかります。
更新時にも所定の手続きを行う必要があります(更新については後述)。
こうした手間はありますが、公的支援を受けるためには必要なプロセスです。
手帳取得によるサポートの充実と比べれば、デメリットは小さいと言えるでしょう。
療育手帳の申請方法と更新手続き
療育手帳はお住まいの市区町村役所で申請します。
ここでは一般的な申請の流れを5つのステップで説明します。
自治体によって細部は異なる場合がありますが、おおむね以下のような手順になります。
役所窓口での相談・申請書類の入手
まず市区町村の障害福祉担当窓口(例:〇〇市役所障害福祉課)に行き、「療育手帳を申請したい」旨を伝えます。
窓口で申請書(交付申請書)や案内資料を受け取り、手続きの説明を受けます。
不明点があればこの時点で質問しておきましょう。
なお申請の際の手数料は無料です(※医師の診断書料や交通費などは自己負担)。
必要書類の準備・提出
案内に従って書類を準備し、再度窓口へ提出します。自治体により多少異なりますが、一般的に必要な書類は次の通りです。
- (a) 療育手帳交付申請書(窓口でもらえます)
- (b) 本人の写真(サイズ指定あり。例:縦4cm×横3cm)
- (c) 本人および保護者のマイナンバー確認書類
- (d) 認印(スタンプでも可)
場合によっては医師の診断書や意見書を求められることもあります。提出書類が揃うと、役所から専門機関での判定の予約が行われます。
判定機関での面接・検査(判定)
定められた日時に知的障害の判定を受けます。
18歳未満の場合は管轄の児童相談所で、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所(名称は地域で異なります)での判定となります。
当日は本人と保護者(または支援者)が一緒に訪問し、専門スタッフによる検査や面談に臨みます。
具体的には知能検査(IQテスト)を本人に対して実施し、その後聞き取り調査として生育歴(幼少期の発達の様子)や現在の生活状況について保護者へのヒアリングが行われます。
リラックスして実力を発揮できるよう、体調を整え落ち着いて受検しましょう。
判定結果の通知
判定機関での検査結果にもとづき、障害の有無と程度が判定されます。
療育手帳を交付されることになった場合は、等級(例:AまたはB)が決定され、市区町村役所へ結果が送られます。
申請者には役所から「交付準備ができた」旨の通知が郵送されます。判定から交付までは概ね1~2ヶ月程度かかるのが一般的です。
なお判定の結果、基準に該当しない場合は交付されないこともあります(その場合も通知があります)。
療育手帳の交付・受け取り
役所からの通知を受け取ったら、窓口に出向いて療育手帳の受け取り手続きを行います。
窓口で手帳が手渡され、担当者から手帳の使い方や次回の更新時期について説明を受けます。
お疲れさまでした!これで療育手帳の取得完了です。
受け取った手帳は、大切に保管し必要なときに提示できるようにしましょう。
更新(再判定)について
療育手帳は、運転免許証のように期限が来ると自動的に失効する仕組みではありません。
ただし手帳に「次の判定年月」が記載されている場合は、その時期を目安に再判定(程度確認)を受けることになります。
「次の判定年月」を過ぎても直ちに無効になるわけではありませんが、提示先によっては割引等が受けられないこともあるため、切れ目なく制度を利用するには早めの手続きがおすすめです。
例えば東京都では3歳・6歳・12歳・18歳のタイミングで年齢に応じた更新判定が行われます。
大阪府では手帳交付時に次回の更新予定時期が指定され、おおむね5年ごとの再判定が目安とされています。
多くの自治体では、子どもの成長段階に合わせて短いスパンで更新し、18歳で成人判定を行った後は5年前後の周期で更新するケースが多いようです。
更新時には、判定を受けた機関から通知や案内があります。
基本的な流れは新規申請時と似ていますが、書類は簡略化されている場合もあります(写真の貼り替え程度で済むなど)。
指定の児童相談所・更生相談所で再度IQテストや聞き取りが行われ、引き続き手帳交付が必要と判断されれば新しい手帳(もしくは同じ手帳に新たな判定結果の記載)が交付されます。
更新の結果、障害の程度区分が見直される(軽度になった場合はB判定に変更等)こともあります。
注意点として、転居(他都道府県への引っ越し)した場合、改めて新住所地で手帳を再交付(引継ぎ手続き)する必要があります。
引っ越しの際は旧居の手帳発行元か新居の役所に相談してください。
まとめ

療育手帳は、知的障害のある人とその家族にとって生活を支える大切なパートナーです。
手帳を取得することで受けられる支援は多岐にわたり、日常生活の負担軽減から就労支援まで幅広くカバーします。
専門用語が多く最初は難しく感じるかもしれませんが、本記事で解説したようにポイントを押さえればご理解いただけたのではないでしょうか。
「障害者手帳を持つこと」に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし療育手帳は本人がより良い支援を受け、自立と安心につなげていくための道具です。
他人に知られる心配はほとんどなく、必要なときに必要な支援を受けるための鍵となります。
申請手続きには多少時間がかかりますが、一度手にすれば受けられる恩恵は大きいでしょう。
本記事では公式情報に基づいて療育手帳の概要とポイントを詳しく説明しました。
さらに詳細を知りたい場合や具体的な手続きを進めたい場合は、お住まいの自治体の障害福祉担当窓口にぜひ相談してみてください。
療育手帳を上手に活用し、適切な支援を受けながら安心して生活できる環境づくりに役立てていただければ幸いです。
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