知的障害のあるお子さんのコミュニケーション支援ツール

はじめに

知的障害のあるお子さんにとって、意思疎通(コミュニケーション)は日常生活や学習の上で大きな課題となりがちです。

言葉だけで気持ちや要求を伝えることが難しい場合、周囲に理解してもらえないストレスからパニックや自傷行為といった問題行動につながることもあります。

また、周囲から適切な評価を受けられず意欲を失ってしまい、その結果さらに発達の遅れを招くことも指摘されています。

そのため、お子さんの現状のコミュニケーション手段を保障し、思いを伝えられる環境を整えることが極めて重要です。

従来は「なんとか話せるように訓練しよう」という指導が中心になりがちでしたが、訓練の成果が出るまでの間にもコミュニケーションの手段を確保し、伝えられた喜びや便利さを本人が経験できるようにすることが大切だと専門家も強調しています。

こうしたコミュニケーション手段や機器の総称を、専門的には拡大・代替コミュニケーション(AAC)と呼びます。

これは話し言葉以外の手段でコミュニケーションを助けるための技術や方法全般を指し、欧米を中心に研究・開発が進んできました。日本でも少しずつ普及が進み、近年ではICT(情報通信技術)を活用した最新の支援ツールも数多く登場しています。

文部科学省の資料では、特別な支援を必要とする児童生徒に対し、障害の状態や発達段階等に応じてICT(情報機器等)を活用することで、学習上または生活上の困難の改善・克服や、指導の効果を高めることにつながる旨が示されています。(参考:文部科学省ホームページ『特別支援教育における教育の情報化』)

そこで本記事では、知的障害のあるお子さんのコミュニケーションを支える代表的なツールの種類とその特長、実際の活用事例、そして保護者の方が選択・活用する際のポイントについて、専門家の知見や公式情報に基づきながらやさしく解説します。

ぜひお子さんのコミュニケーション支援にお役立てください。

コミュニケーション支援ツールの種類と特長

コミュニケーション支援ツールには様々な種類があります。

ここでは主なものとして (1)音声合成デバイス、(2)絵カード・コミュニケーションボード、(3)タブレットアプリ の3つのカテゴリに分けて、その特長やメリットを説明します。

それぞれのお子さんの特性やニーズに応じて、適したものを選ぶ参考にしてください。

音声合成デバイス(VOCAなど)

VOCA(Voice Output Communication Aid)やSGD(Speech Generating Device)は、ボタン・タッチ・スイッチ等の操作で選択したメッセージを、録音音声または音声合成によって出力するコミュニケーション支援機器です。

日本語では「音声出力コミュニケーションエイド」などとも呼ばれ、一般にVOCA(ヴォカ:Voice Output Communication Aid)という略称が使われます。

この種のデバイスを使うと、話し言葉での会話が難しいお子さんでも、自分の気持ちや意思を音声として周囲に伝えることが可能になります。

例えばボタンに「こんにちは」などのメッセージを録音しておき、お子さんがそれを押すことで音声によるあいさつができます。

学校の朝の会で挨拶や日直の発表を任せてみるなど、様々な場面で活用することでお子さんの主体性や意欲を引き出す効果が期待できます。

たとえ録音された声であっても、子どもが自分のタイミングで音声を発することには大きな意味があり、本人の自信につながるのはもちろん、それを聞いた周囲の児童や大人にも良い影響を与えると報告されています。

音声合成デバイスには、シンプルな構造でボタンを押すと一言だけ音声が流れるタイプから、複数のメッセージを切り替えて再生できるもの、50音の文字盤を内蔵し文字を組み合わせて文を作れる高度な機器まで、いくつかの種類があります。

専用の携帯型装置だけでなく、タブレット端末に音声出力アプリを入れて利用するケースも増えています。

最近の機器では音声の高さや速さを調節できたり、触るだけでなくスイッチや視線入力で操作できたりするものもあり、身体的な制約があるお子さんでも使いやすい工夫がされています。

こうした柔軟性により、一人ひとりの能力に応じたコミュニケーション手段を提供できる点が音声合成デバイスの大きなメリットです。

絵カード・コミュニケーションボード

絵カードやコミュニケーションボードは、文字ではなく絵や写真といった視覚的なシンボルを使って意思疎通を図る道具です。

言葉での表現が難しい知的障害児にとって、視覚情報は理解しやすく伝わりやすいため、絵カードは古くから広く用いられてきました。

例えば、お子さんがジュースを飲みたいときに冷蔵庫を勝手に開けてしまうと誤解を招きがちですが、「ジュース」と描かれたカードをお母さんに手渡す練習を重ねたところ、自分の要求を適切に伝えられるようになったケースがあります。

このようにカードを人に渡すという具体的な行動を伴う方法は、不安定な発話よりもお子さんの要求を明確に周囲に伝えやすくなります。

実際に複数のカードの中から自分の伝えたいものを選んで渡すことを覚えたお子さんもおり、好きなものを「これがほしい!」と自分で示せる喜びがコミュニケーション意欲の向上につながった例も報告されています。

絵カードで扱う内容は食べ物、飲み物、トイレ、感情、遊びや行き先など多岐にわたります。

カテゴリーごとにカードを用意し、お子さんがよく使う表現から徐々に増やしていくと良いでしょう。

最初は実際に使っているコップやお気に入りのおもちゃなど、身近で親しみやすい写真やイラストから始めると理解が深まりやすくなります。

複数のカードは見やすくボードに並べておき、必要に応じて指さしや手渡しで使うといった工夫が一般的です。

状況に応じてカードを組み合わせればある程度複雑な意思も伝えられますし、絵カードを並べて一日の予定を視覚化することで見通しを持たせる、といった応用もできます。

実際、中学生のお子さんが「次に何をするのか分からず不安になる」という課題に対し、やることリストを絵カードで順番に提示したところ、自分でカードを確認しながら安心して行動に移れるようになった例があります。

このような視覚支援は、自閉スペクトラム症のお子さんの支援で知られるTEACCHプログラムなどでも取り入れられている手法です。(※TEACCHでは、予定や手順を「見て分かる形」にするなど、視覚的な手がかりを用いた支援が重視されています。)

最近では絵カードも紙だけでなくデジタル化が進んでおり、タブレット上でイラストを表示して指でタッチすることで意思表示ができるアプリも登場しています。

後述するような専用アプリを使えば、音声読み上げと組み合わせることも容易で、まさに絵カードと音声合成の利点を兼ね備えたツールと言えます。

さらに、コミュニケーション支援ボードと呼ばれるものも各所で活用されています。

これは飲食店や駅、病院などに誰でも使える指さしボードとして設置されているものです。

たとえば「警察版」「救急版」のコミュニケーション支援ボードは、交番・パトカーや救急車両等に配備されている地域もあります(配備状況は自治体・機関により異なります)。

2003年頃から全国規模での配布が始まり、その後、駅や災害時など用途別のボードも開発されてきました。

警察版ボードの利用状況調査によると、これらのボードは知的障害者や自閉症の方だけでなく、外国人、高齢者、幼児などにも幅広く活用されていることが分かっています。

このように絵やシンボルを使ったコミュニケーション支援ツールは、障害の有無を問わず誰もが使えるユニバーサルな伝達手段として社会に浸透しつつあります。

タブレットアプリ・デジタルツール

近年急速に発展しているのが、タブレット端末やスマートフォン上で動作するコミュニケーション支援アプリです。

これらは上で述べた音声合成や絵カードの機能をソフトウェア上で実現したもので、しばしばAACアプリとも呼ばれます。

専用機器に比べ身近で導入しやすいことから、学校や家庭で使われる機会が増えています。

実際、特別支援教育の現場でもiPad等を活用してコミュニケーション支援を行う事例が多数報告されており、文科省や国立特別支援教育総合研究所でもそうしたICT活用事例を収集・公表しています。

タブレットの利点は、1台で多彩な機能を持つアプリを使い分けられる点です。

コミュニケーション支援のアプリにも様々な種類があり、例えばイラストや写真をタッチすると音声で読み上げるシンプルなものから、カテゴリー分けされた大量の絵カードデータベースを搭載しカスタマイズ可能なもの、さらには文字盤入力で合成音声を流すものまで、選択肢は非常に豊富です。

実名を挙げると、代表的なところでは 「トーキングエイド」(文字盤やイラストで音声出力)や 「DropTalk(ドロップトーク)」(イラストや写真と音声でのやりとり)といったアプリが知られており、その他にも、SoundingBoard(英語圏で普及)、指伝話(ゆびでんわ)、かなトーク、vocaco、たすくコミュニケーション、えこみゅ等、国内外で様々なアプリが開発・提供されています。(※アプリは提供終了・名称変更・対応OS変更が起こり得るため、導入前に公式サイトやストアで最新の提供状況をご確認ください。)

多くのアプリは直感的に操作できるよう工夫されており、絵カードを並べて選択する感覚で使えるものが主流です。

アプリによってはお子さんの興味関心に合わせて内容やレイアウトを自由に編集できるものもあり、それぞれのニーズに応じた画面・語彙を設定できます。

たとえば「食べ物」のカテゴリーにお子さんの好きなメニューの写真を追加したり、よく使うフレーズボタンを作ったりといった調整が保護者でも簡単に行えます。

また、デジタルならではの特徴としてゲーム的な要素を取り入れたアプリもあります。

例えば絵カードを使った簡単なクイズやパズルをしながら言葉を学んだり、通信対戦ゲームのチャット機能で定型文を送って会話練習したりと、遊びの中で楽しみながらコミュニケーション能力を伸ばす狙いです。

実際に教育現場でも、「タブレットでゲームをする感覚でやりとりしていたら、いつの間にか伝える言葉が増えていた」という声も聞かれます。

ゲーム性のおかげで集中力が高まり、コミュニケーションの練習に前向きに取り組める効果が期待できるからです。

このように、タブレットアプリはインタラクティブで柔軟性の高い支援ツールとして注目されています。

ただし、アプリは機能が多い分、設定や操作に慣れる必要もあります。

最初は身近な場面で一部の機能から使い始め、徐々に活用範囲を広げると良いでしょう。

周囲の大人がお手本を見せながら一緒に使うことで、お子さんも使い方を学びやすくなります。

デジタル機器に触れる機会が増えている現代っ子にとっては親和性の高い手段ですので、学校と家庭の両方で取り入れていくことで自然に生活の中に溶け込むコミュニケーション方法になるでしょう。

コミュニケーション支援ツールの種類比較

どのツールにも長所・短所があります。以下に主要なツールの概要を比較表にまとめました。お子さんの特性に照らし合わせて、最適な方法選びの参考にしてください。

ツールの種類具体例特長・メリット留意点 (デメリット)
音声合成デバイス
(VOCAなど)
専用VOCA装置
録音メッセージボタン
音声合成アプリ
・ボタン一つで音声メッセージを出力でき、発声を代替
・本人のタイミングで音声発話できるため主体性を引き出す効果
・声で伝えられることで周囲からの理解や反応を得やすい
・機器によっては録音や設定に手間がかかる。
・伝えられるメッセージの種類が限定されやすい。
・端末の持ち運びが必要で、操作にはある程度の練習も必要。
絵カード・コミュニケーションボードPECS(絵カード交換)
指さしボード(施設設置)
視覚的で直感的なため理解しやすく、幅広い場面・人に活用可能。
カテゴリごとにカードを整理でき、伝えたい内容を選びやすい。
手で持って渡す/指す行動を通じて、要求や意思が明確に伝わる。
・カードやボードを準備・管理する手間がある。
・絵の意味を最初に教える支援が必要
・カードが増えすぎると選択に時間がかかったり混乱する恐れ。
タブレット・スマホ用アプリDropTalk, 指伝話など
AAC各種アプリ
・1台で多くの語彙や機能を搭載でき、写真・声など表現手段が豊富。
設定をカスタマイズ可能で、各児童に合わせた画面や語彙を用意できる。
・ゲーム性など楽しさを取り入れやすく、意欲や集中力を高めながら練習できる。
・機器の操作やアプリの設定習熟に時間がかかる場合がある。
・タブレットの画面操作に注意がそれる(他のアプリに興味が移る等)可能性。
・端末の購入費用や充電管理などコスト・管理負担も考慮が必要。

支援ツール活用によるコミュニケーション向上の実例

実際にコミュニケーション支援ツールを導入することで、お子さんの表現力や対人関係にどのような変化があったのか、いくつか具体的な事例を紹介します。

お子さんへの効果をイメージする参考になさってください。

【事例1】 知的障害の男児(自閉傾向あり、単語レベルの発話)

欲しい物があるとすぐ手を伸ばして取ろうとしてしまい周囲に誤解されることがありました。

そこで「欲しい物は人にカードを渡してお願いする」練習を導入したところ、「ジュース」や「パソコン」などの絵カードを自分で選んで渡すことで要求を伝えられるようになりました。

カードを介したやり取りを経験する中で、周囲の大人もすぐ反応してくれるようになり、お子さんは伝えれば望みがかなうことを学習しました。

その結果、要求行動が適切な形に落ち着き、問題行動の減少と自己表現の意欲向上が見られました。

(参考:障害保健福祉研究情報システムホームページ『知的障害をもつ人のためのシンボルコミュニケーション』)

【事例2】 中学生の自閉傾向のある男児(非発語だが指示理解は良好)

「今やっている活動がいつ終わるのか」「次に何をするのか」が分からないと不安を示し、パニックになることがありました。

言葉で「あと5分で終わりだよ」「次は〇〇するよ」と説明しても納得できない様子でしたが、その日の予定を絵カードで順番に並べて視覚的に提示したところ、自分でカードを確認しながら落ち着いて活動に取り組めるようになりました。

「見てわかる形」で予定を示すことで先の見通しが持てるようになり、不安や混乱が大幅に軽減したのです。

以降、この視覚スケジュールを毎朝確認する習慣を取り入れたことで、家庭でも一日の流れに自信を持って過ごせるようになったと保護者の方も報告しています。

(参考:障害保健福祉研究情報システムホームページ『知的障害をもつ人のためのシンボルコミュニケーション』)

【事例3】 特別支援学校に在籍する重度知的障害・自閉症傾向の男児(音声言語による表出が困難)

学校が中心となって複数のAAC手段を段階的に導入した事例があります。

まず視線入力に対応した意思伝達装置(コミュニケーション機器)と言語シンボルカードを導入し、次にタブレット型のコミュニケーションアプリ(音声合成つき)を組み合わせて使用しました。

その結果、先生や家族の名前を呼んだり、要求・報告を自ら行ったりする頻度が増加し、周囲との関わりが活発になりました。

この学校では支援計画にこれらAACツールの活用を位置付け、機器を個別にカスタマイズして小学部から中学部へと継続的に引き継いだそうです。

そのおかげで導入から2年後もツールの使用が継続し、学校だけでなく家庭内でもコミュニケーション手段として根付いたとのことです。

保護者の方も「家でも積極的に機器を使うようになり、表情が豊かになった」と変化を実感しています。

この事例は、学校と家庭が連携して支援ツールを活用し続けることで、お子さんの長期的なコミュニケーション能力向上につながった好例といえるでしょう。

(参考:J-STAGEホームページ『特別支援学校における発話の困難な知的障害児の言語表出を促進するICTの活用と継続』)

ツール選択と活用のポイント ~保護者の方へ~

最後に、保護者の方向けにコミュニケーション支援ツールを選ぶ際のポイントや家庭での活用のコツをまとめます。

専門家の提言や公的制度も踏まえていますので、参考にしてみてください。

お子さんの特性に合った方法を探す: ひと口にコミュニケーション支援ツールと言っても、お子さんによって適性は様々です。

視覚優位であれば絵カードが力を発揮しますし、音への反応が良ければ音声デバイスが適しているかもしれません。

また動作模倣が得意ならジェスチャーや簡単な手話も有効でしょう。専門家の中には「話しことばを持たない子の場合、ICT機器を含め様々なAAC手段(サイン、絵カード等)を試し、その子にとって最も使いやすい方法を探るべき」と指摘する声もあります。

最初から一つに絞り込まず、いくつか併用・試行しながら反応を見て決める柔軟さも大切です。

ツール導入は徐々に・シンプルに: 新しいツールを導入する際は、できるだけシンプルな段階から始めることを心がけましょう。

例えば絵カードなら、最初は本当に必要な数枚だけを使い、難しい絵や情報量の多いカードは避けます。

「これは何を表すカードか」をお子さんと一緒に確認しながら使い、上手くいったら少しずつカードの種類を増やしていくと混乱が少なくて済みます。

タブレットアプリでも、初めは一画面に2~3個のボタンだけ表示させる設定にするなど、迷わず選べる環境を整えてあげると良いでしょう。

慣れてきたら徐々に語彙や機能を拡張して、ステップアップしていけば大丈夫です。

学校や支援者との連携

お子さんのコミュニケーション支援は、家庭だけでなく学校や療育の場と連携して行うことが成功の鍵です。

学校で使っている支援ツールがあれば家庭でも積極的に取り入れ、逆にご家庭で工夫しているやり方があれば学校の先生や言語聴覚士(ST)等に共有しましょう。

例えば特別支援学校では個別の「教育支援計画」にコミュニケーション手段としてツール利用を明記し、進級時にきちんと引き継ぎを行った結果、次の学年でも一貫して活用が続いたという報告があります。

学校の指導計画に位置付けて共有しておくことで、学校側が必要性を把握しやすくなり、合理的配慮としての支援(例:授業中の活用、設定支援、場面の調整など)を検討してもらいやすくなります。

保護者の方から働きかけて、担任や支援員の先生と情報交換をし、家庭と学校で支援の方向性を揃えるようにしましょう。

連絡ノートで家庭での様子を伝えたり、支援会議で意見を出したりすることで、お子さんに最適な支援環境が整いやすくなります。

日常生活に組み込む

支援ツールは使って初めて意味があるものです。

どんなに高性能でも、しまい込んでいては宝の持ち腐れになってしまいます。

大切なのは、お子さんも周囲も無理なく日常的に活用できる形で定着させることです。

例えば絵カードなら食卓やお出かけ前にさっと使える場所に用意しておく、音声端末ならいつでも持ち歩けるようストラップを付ける、タブレットなら見守りながら生活の流れの中で声掛けの延長で使わせてみる、など工夫してみましょう。

ご家族も一緒に「このカードで教えてね」「ボタン押してごらん」と促し、成功したら大げさに喜んであげると、お子さんも繰り返し使いたくなります。

毎日の積み重ねで、ツールの使用が当たり前の習慣になればしめたものです。

自信と意欲を育むサポート

保護者の積極的な関わりと温かい見守りが、お子さんのコミュニケーション能力向上に与える影響は計り知れません。

ツールを使ってうまく伝えられたときは大いに褒めて自信に繋げ、うまくいかないときも焦らず「こうしてみようか」と寄り添ってあげてください。

家庭での毎日の対話の積み重ねが、お子さんに「伝えるって楽しい」「あなたの話を聞きたい」という安心感をもたらし、自己表現の意欲を引き出します。

これは生活の質(QOL)向上にも直結します。

実際、自分のしてほしい介助や食べたい物を表現できることこそが真の自立につながるとの指摘もあります。

周囲に支えられながら自分の思いを伝えられる経験を重ねることで、お子さんは少しずつ社会性や自立心を育んでいくことでしょう。

利用できる支援制度をチェック

日常生活用具(情報・意思疎通支援用具など)は市町村が実施しており、対象者要件・給付品目・基準額は自治体や用具の種類によって異なります

例えば携帯用会話補助装置は、音声・言語機能障害や肢体不自由等の要件が設定されている自治体もあります。

まずはお住まいの自治体の障害福祉窓口で、該当要件と必要書類をご確認ください。

近年進められているIGAスクール構想では、児童生徒の1人1台端末と通信ネットワークの整備が進められています。

端末の種類(タブレット/ノートPC等)や運用方法は自治体・学校で異なるため、学校で配布・貸与されている端末に、必要なコミュニケーション支援アプリ等を入れて活用する形が取りやすくなっています。

そのため支援学校では最初から支給された端末にコミュニケーションアプリを入れて活用するといった取り組みも一般的になりつつあります。

このように入手・導入のハードルは少しずつ下がってきていますので、利用できる制度はぜひ積極的に活用しましょう。

専門家への相談

ツール選びや使い方で悩んだときは、専門家に遠慮なく相談しましょう。

地域の発達障害者支援センターや言語聴覚士(ST)のいるリハビリ施設では、コミュニケーション手段に関するアドバイスを受けられることがあります。

また、必要に応じて支援機器の業者やボランティア団体からデモ機を借りて試用させてもらえる場合もあります。

お子さんが実際に使ってみて反応を確かめることは非常に有益です。学校の先生とも連携し、チームで最適な方法を検討する姿勢が大切です。

まとめ

まとめ

コミュニケーション支援ツールは、知的障害のあるお子さんの「伝えたい」「分かりたい」を叶える頼もしい味方です。

音声合成から絵カード、アプリに至るまで年々技術が進化し、新しい工夫が次々に登場しています。

本記事で紹介したように、それぞれのお子さんに適したツールを組み合わせて活用することで、本人の潜在能力を引き出し、社会とのつながりを広げることができます。

実際、AAC(拡大代替コミュニケーション)の利用によって障害のある人の自発的なコミュニケーションが引き出され、生活の質が向上することにつながると報告されています。

もちろん、どんな支援方法にも万能なものはなく、日々の積極的な活用と周囲のサポートがあってこそ効果を発揮します。

最先端のツールであっても、お子さんの生活の中にしっかり根付かせ、継続的に使っていくことが何より重要です。

幸い、日本社会全体でも障害のある人のコミュニケーションを支援する取り組みが広がっており、学校教育や地域サービスの場でも理解が深まりつつあります。

保護者である皆さんの取り組みが、お子さんの未来を大きく拓く力になるはずです。

ぜひ学校や専門家と協力しながら、適切なツールを活用してみてください。

お子さんの「伝えたい」が届き、「わかってもらえた!」という喜びを、ぜひ支援ツールとともに増やしていってください。

本記事の情報が、そのお手伝いとなれば幸いです。