ペアレントトレーニングとは?

知的障害のあるお子さんを育てるなかで、「どう接してあげればいいのだろう」「この対応で合っているのかな」と悩み、ときに孤独を感じる親御さんは少なくありません。

そんな子育ての困りごとに向き合う手立てのひとつが、「ペアレントトレーニング」です。

この記事では、ペアレントトレーニングとは何か、基本となる考え方、進め方、期待される効果、そしてどこで受けられるのかを、厚生労働省の公的なガイドブックに沿って分かりやすくご説明します。

当事務所は障害年金の申請を専門とする社会保険労務士法人ですが、知的障害のあるお子さんとご家族に少しでも役立つ情報をお届けしたいと考え、この記事を作成しています。

ペアレントトレーニングとは

ペアレントトレーニングとは、親御さん自身が子どもへの関わり方のコツを学ぶ育児支援プログラムです。

子ども本人を責めたり無理に変えようとしたりするのではなく、親が関わり方を学ぶことを通じて、子どもの適切な行動を促していく点に特徴があります。

親が「関わり方のコツ」を学ぶプログラム

ペアレントトレーニングは、ほめ方や指示の出し方など、具体的な養育スキルを親が身につけることを目指します。

厚生労働省の事業では、環境を整えることや子どもへの肯定的な働きかけを学び、保護者の関わり方や心理的なストレスの改善、子どもの適切な行動を促し、不適切な行動を減らしていくことを目的としたプログラムと位置づけられています。

専門用語では「心理教育的アプローチ」に分類されますが、平たく言えば「親がほめ方や声かけの工夫を学び、親子の関係をよい方向へ変えていく学びの場」です。

1960年代のアメリカで生まれ、日本で広がった

ペアレントトレーニングは、1960年代から米国で発展してきました。

「親は子どもにとって身近な支援者」という考え方が土台にあります。

日本では1990年代以降、発達障害のあるお子さんを対象とした複数のプログラム(肥前式・精研式・奈良式・鳥取大学式など)が発展し、近年は自治体や医療機関、発達支援機関などさまざまな場で実施されています。

知的障害の子育てとペアレントトレーニング

ペアレントトレーニングは、発達障害支援における家族支援として整備・普及してきたプログラムですが、知的障害のあるお子さんの子育てにも、発達段階に合わせた工夫を加えながら活用されています。

ここでは、知的障害の子育てとの関係を整理します。

「治す」ためではなく、関わり方を整えるための支援

ペアレントトレーニングは、知的障害そのものを「治す」ための医療的な手法ではありません。

あくまでも、家庭での声かけや環境の工夫を通じて、親子がより穏やかに過ごせるようにするための家族支援です。

知的発達の遅れがある場合は、ほめ方や指示の出し方を、お子さんの発達段階に合わせて工夫することが大切とされています。

お子さんの診断や治療、発達に関する医学的な判断については、主治医や専門機関にご相談ください。

この記事は一般的な情報の提供にとどまります。

発達が気になる段階から活用できる

厚生労働省の事業では、発達障害の診断のあるお子さんだけでなく、その疑いのあるお子さんも対象とされています。

ただし、実際の受講条件は実施機関によって異なります。

「発達がゆっくりかもしれない」と感じはじめた段階から、関わり方を学ぶ機会として活用できるのも特徴です。

ペアレントトレーニングの基本「6つのコアエレメント」

ペアレントトレーニングには多くのプログラムがありますが、共通する核となる要素として「6つのコアエレメント」が整理されています。

これは厚生労働省の事業で作成された『ペアレント・トレーニング実践ガイドブック』で示された、プログラムの土台となる考え方です。

6つのコアエレメント

ガイドブックでは、ペアレントトレーニングの「基本プラットホーム」を、①コアエレメント(プログラムの核となる要素)、②運営の原則、③実施者の専門性の3つで構成しています。このうちコアエレメントは、次の6つです。

コアエレメント内容(概要)
子どもの良いところ探し&ほめる子どもの適応的な行動に注目し、特性に応じたほめ方・関わり方を身につける
子どもの行動の3つのタイプわけ行動を「好ましい行動」「好ましくない行動」「許しがたい行動」に分けて対応を考える
行動理解(ABC分析)「行動の前のきっかけ(A)」「行動(B)」「行動の後の結果(C)」に分けて、行動を客観的に捉える
環境調整困った行動が起きる前に、環境面の工夫を行う
子どもが達成しやすい指示子どもが理解し、行動に移しやすい指示の出し方を学ぶ
子どもの不適切な行動への対応好ましくない行動への落ち着いた対応の仕方を学ぶ

(出典:厚生労働省 令和元年度障害者総合福祉推進事業『ペアレント・トレーニング実践ガイドブック』(作成:一般社団法人 日本発達障害ネットワーク JDDnet 事業委員会)

共通する軸は「ほめて育てる」

6つの要素に共通しているのは、「困った行動を叱る」ことよりも「できている行動に気づいてほめる」ことを大切にする姿勢です。

「困った子」ではなく「困っている子」と捉え直し、小さくてもできている行動を認めてほめていく——この積み重ねによって、〈親:ほめる⇔子:ほめられる〉という親子の好循環が生まれていきます。

これは、お子さんの特性にかかわらず、子育て全般に通じる考え方でもあります。

ペアレントトレーニングのやり方・進め方

ペアレントトレーニングは、講義を聞くだけでなく、家庭での実践を通して関わり方を身につけていきます。

ここでは、一般的な進め方の流れをご紹介します。具体的な内容は実施機関によって異なります。

グループ形式の一般的な流れ

厚生労働省の資料では、1グループおおむね4〜8人程度の少人数で、1回あたり90分〜2時間程度、全5回以上(隔週で6回程度のプログラムが多い)を運営しやすい目安としています。実施機関により異なります。

各回では講義とワーク(演習・ロールプレイ)を行い、学んだことを家庭で「ホームワーク」として実践し、次回にその様子を共有する、というサイクルで進みます。同じ悩みを持つ親同士が出会える点も、ペアレントトレーニングの大切な役割です。

家庭での関わり方の工夫(例)

家庭では、まずお子さんの行動を観察し、「できている行動」に注目することから始めます。

たとえば、口頭での声かけだけでなく、残り時間が目で見て分かるようにするなど、お子さんが理解しやすい伝え方を試していきます。

ただし、どの工夫が合うかはお子さんによって異なります。実際の進め方は、受講する機関の指導に沿って取り組むことをおすすめします。

ペアレントトレーニングで期待される効果

ペアレントトレーニングには、これまでの研究で一定の効果が報告されています。

ここでは一般的に報告されている効果をご紹介します。効果の現れ方には個人差があります。

子どもにとっての効果

研究やガイドブックでは、子どもの適応的な行動が増えることや、問題とされる行動が改善する傾向が報告されています。

「こうすればほめてもらえる」という見通しが持てるようになると、お子さん自身も落ち着いて行動しやすくなり、自尊心(自己肯定感)を育みやすくなると考えられています。

親・家族にとっての効果

親御さんにとっては、関わり方への自信がつき、子育てのストレスが軽くなる効果が報告されています。

また、同じ立場の親同士で悩みを分かち合えることで、孤立感がやわらぐことも大きな意味を持ちます。

親が「切れ目のない支援」のキーパーソンになっていけることも、ペアレントトレーニングの意義とされています。

ペアレントトレーニングはどこで受けられる?

ペアレントトレーニングは、公的な家族支援の一環として、地域のさまざまな機関で実施されています。

費用や開催回数は機関によって異なります。

自治体・発達支援センターなどで実施

厚生労働省の「発達障害児者及び家族等支援事業」では、都道府県や市町村に対してペアレントトレーニングの実施が支援されています。

実際に、自治体の発達支援センターや保健センター、療育機関、医療機関などで実施例があります。

お住まいの地域でどこが実施しているかは、自治体によって異なります。

申し込み・確認の進め方

まずは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、発達支援センター、保健センターなどに問い合わせてみるのがよいでしょう。

児童発達支援や放課後等デイサービスを利用している場合は、その事業所に相談できることもあります。

受講の条件・費用・日程は機関ごとに異なるため、各窓口でご確認ください。

あわせて知っておきたい|知的障害と障害年金

日々の子育て支援とあわせて、ご家族に知っておいていただきたい制度として「障害年金」があります。当事務所が専門とする分野ですので、関連情報として簡単にご紹介します。

20歳前の知的障害は「障害基礎年金」の対象になり得る

知的障害は、生まれつき(20歳前)の障害として扱われることが多く、その場合は「20歳前傷病による障害基礎年金」の対象になり得ます。

この場合、保険料の納付要件は問われない一方で、ご本人の前年の所得に応じて、年金の全額または半額が支給停止となる所得制限があります。

支給制限の基準額や具体的な手続きは、下記の関連記事や日本年金機構の公式ページでご確認ください。

知的障害で障害基礎年金を請求する場合の対象等級は1級・2級です(障害基礎年金に3級はないためです)。

「療育手帳がB2(軽度)だと受給できない」という声を耳にすることもありますが、軽度とされる場合でも受給に至った例はあります。

ただし、受給の可否や等級は、日本年金機構の審査によって個別に判断されます。

弊事務所でも、知的障害のあるお子さん・ご本人の障害年金申請を多く手がけています。※個別事案により判断は異なります。

詳しくは、以下の関連記事もご覧ください。

まとめ

まとめ

ペアレントトレーニングは、親御さんが子どもへの関わり方を学び、親子がより穏やかに過ごせるようにするための家族支援プログラムです。

「ほめて育てる」を軸とした6つのコアエレメントが基本となり、自治体や発達支援機関などで受けることができます。

知的障害そのものの診断・治療は主治医や専門機関に、受講先はお住まいの自治体窓口にご相談ください。そして、ご家族の支えとなる制度として、障害年金についても知っておいていただければと思います。

障害年金の申請でお悩みのご家族の方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年6月時点の情報および公的資料に基づき作成しています。制度や運用が変更される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。ペアレントトレーニングの受講先はお住まいの自治体窓口へ、お子さんの診断・治療など医学的判断は主治医に、障害年金の個別の事案については社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

知的障害のある方とご家族を応援します

わくわく社会保険労務士法人は、知的障害のある方とご家族を応援します。

当事務所は障害年金の申請を専門とした社会保険労務士法人ですが、こちらのページでは障害年金に関係の無い情報であっても、知的障害のある方とご家族にとって少しでもお役に立てる情報を発信できればと思い記事を作成しています。

何か少しでも参考になりましたら幸いです。

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