知的障害の親の会とは?

知的障害のあるお子さんを育てる中で、将来への不安や日々の悩みを一人で抱え込んでいませんか。

そんなときに力強い味方となってくれるのが「知的障害の親の会」です。

全国各地に広がる親の会では、同じ立場の親同士がつながり、情報交換や励まし合いを行っています。

本記事では知的障害の親の会の基本から全国組織の概要、参加するメリットや探し方、参加前に確認しておきたいポイントまで、やさしく解説します。

知的障害の親の会とは

知的障害の親の会とは、知的障害のある人の親や家族が集まり、共通の悩みや課題について情報交換や支え合いを行う自助グループです。

「親の会」は一般に同じ悩みを抱える親同士が集う会のことで、発達に特性のある子の親の会や不登校の親の会など様々な形があります。

知的障害の親の会の場合、知的障害や発達障害のある子ども・人の親御さんを中心に構成され、日常の困りごとから将来の心配まで、互いに相談し合えるコミュニティとなっています。

知的障害の親の会(家族会)は地域ごとにさまざまな団体があります。

その中でも全国規模のネットワークとしてよく知られているのが、「全国手をつなぐ育成会連合会」を頂点に、各地の育成会が連携する組織です(正会員55団体、会員は約10万人規模)。

「手をつなぐ」運動は、1950年(昭和25年)頃に知的障害のある子どもの親たちの活動が始まり、1952年(昭和27年)に「精神薄弱児育成会」(当時の名称)が結成されたことが、全国に広がる運動の出発点の一つとされています。(※「精神薄弱」という言葉は現在では「知的障害」へ置き換えられており、本記事では歴史的名称として引用しています。)

以来各地に親の会が結成され、差別の解消や教育・福祉の充実を求めて活動が続けられてきました。

全国手をつなぐ育成会連合会と全国ネットワーク

現在、知的障害者の親の会は全国規模のネットワークを形成しています。

その中心が一般社団法人 全国手をつなぐ育成会連合会で、47都道府県の育成会および指定都市の育成会あわせて55団体が加盟し、約10万人の会員が所属しています。

全国手をつなぐ育成会連合会は、知的障害のある人と家族の 権利擁護や政策提言、地域で安心して暮らせる制度づくり のために活動する民間団体の連合体です。

長年にわたり国や自治体への働きかけや啓発活動を行い、共生社会の実現に貢献しています。

全国手をつなぐ育成会連合会は創立70周年を迎え、2025年には東京で記念の全国大会が開催されました。

2025年11月9日に行われた「第10回(70周年記念)全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会 東京大会」では、佳子内親王殿下がご臨席され、松本文部科学大臣が出席しています。(文部科学省ホームページ『第10回(70周年記念)全国手をつなぐ育成会連合会全国大会東京大会』)

このように、親の会活動は国からも重要なパートナーとして認識されています。

全国手をつなぐ育成会連合会の加盟団体である都道府県・政令市の育成会は、それぞれの地域で親の会活動を展開しています。

各都道府県組織のもとに市区町村単位や学校・施設単位の親の会(家族会)が存在し、地域に根ざした交流や支援活動を行っています。

例えば宮城県では、宮城県手をつなぐ育成会が公開している2025年度の名簿に、市町単位の育成会・親の会が25団体掲載されています(別枠で仙台市の育成会・家族会等の掲載もあります)。

親の会は親・家族が中心の団体が多い一方、地域や団体によっては、知的障害のあるご本人が参加する「本人部会(本人の会)」や、きょうだい・支援者が関わる枠を設けている場合もあります。

例えば宮城県手をつなぐ育成会では「みやぎフレンズ会(ほんにんの会)」の案内があります。

親の会に参加するメリット

それでは、親の会に参加するとどのようなメリットがあるのかをご説明したいと思います。

【メリット1】情報共有と専門知識の入手

親の会に参加すると、福祉サービスや療育・教育の最新情報を得やすくなります。

全国手をつなぐ育成会連合会では機関誌『手をつなぐ』を発行しており、制度の動向や支援事例など有益な情報が提供されています。また各地の親の会でも定期的に勉強会や講演会が開催され、専門家の話を直接聞ける機会があります。

例えば大規模な親の会では月1〜2回ペースで専門家の講演会や映画上映会が行われ、普段なかなか聞けない貴重な話を学ぶことができます。

こうした場で得た知識は、お子さんへの支援や将来設計にきっと役立つでしょう。

【メリット2】仲間との共感・精神的サポート

同じ悩みを経験する親同士だからこそ、悩みや喜びを分かち合える安心感があります。

「うちの子だけじゃないんだ」という共感や、「分かるよ、その気持ち」という励ましは、日々の子育ての大きな支えになります。

親の会ではお茶会や座談会などカジュアルな交流の場が設けられることも多く、日頃感じている悩みを気兼ねなく話せます。

孤独になりがちな障害児の子育てですが、親の会に参加することで孤立感が軽減し、心の負担が和らぐと感じられる方もいらっしゃいます。

【メリット3】実践的なアドバイス

先輩の親御さんたちから、具体的で実践的なアドバイスをもらえるのも大きなメリットです。

たとえば就学先の選択、就労支援の利用方法、日常の困りごとへの対処法など、実際に経験した人ならではの「生きた情報」を教えてもらえるでしょう。

「年齢や発達段階に応じた支援方法を具体的に共有してもらえた」という参加者の声もあります。

行政や本から得る知識だけでなく、現場の知恵が手に入るのは親の会ならではです。

【メリット4】社会への働きかけ

親の会は単なる井戸端会議にとどまらず、行政や社会への提言活動も行っています。

全国組織では政府機関との意見交換や政策提言のための調査研究も行われ、法律制度の整備に貢献してきました。

実際に、親の会が長年要望してきた「知的障害者の法定雇用率制度への対象化」が実現し、知的障害のある人の雇用促進に道が開かれた経緯もあります。

障害者雇用の法定雇用率制度は、段階的に対象範囲が拡大してきました。

厚労省資料では、知的障害者については1998年に雇用の義務化が示されており、法定雇用率の算定基礎の対象にも1998年に追加されたと整理されています。

また、企業の実雇用率を計算する際の対象としては、知的障害者が1988年に追加されたという説明もあります。

このように、一人では声を上げにくい課題も、親の会というまとまりがあることで国や自治体を動かす力となります。

自分たちの経験を社会に活かし、後に続く世代の環境をより良くできるのは、大きなやりがいと言えるでしょう。

【メリット5】当事者の持つ力を信じて引き出す

最近では親だけでなく、知的障害のあるご本人が主体的に活動する場作りも進んでいます。

親の会の中には本人部会(ご本人の会)を設けているところもあり、例えば先ほどご紹介した宮城県育成会の「みやぎフレンズ会」のように、本人が企画・運営する活動を支援しています。

親の会に参加することで、お子さん自身が社会参加の機会を得たり、自主性を伸ばしたりするきっかけにもなります。

以上のように、知的障害の親の会に参加することは、情報・仲間・社会とのつながりを得る貴重なチャンスとなります。

「悩んでいたのは自分ひとりじゃなかった」「親の会で聞いたことをヒントに行政のサービスを利用できた」など、多くの先輩方がそのメリットを実感しています。

親の会を探す方法

初めて親の会への参加を考える方にとって、「自分の地域に親の会があるだろうか?」「どうやって見つければいいのか?」という疑問はもっともです。

以下に、親の会を探すいくつかの方法をご紹介します。

【方法1】全国組織や都道府県育成会の窓口を利用

全国手をつなぐ育成会連合会の公式サイトでは、各都道府県・政令指定都市の育成会(親の会)連絡先やリンクが案内されています。

まずはお住まいの都道府県名で「○○県 手をつなぐ育成会」を検索してみましょう。

多くの地域で育成会のホームページが開設されており、そこに支部(市区町村単位の親の会)の一覧や問い合わせ先が載っています。

実際、宮城県手をつなぐ育成会のサイトには県内各市町の親の会が28団体加盟していることや連絡先が紹介されています。

こうした公式情報を手がかりにすると確実です。

【方法2】市区町村の障害福祉担当に問い合わせる

お住まいの自治体(市区町村)の障害福祉課や発達障害者支援センターに、「知的障害(発達障害)の親の会を紹介してほしい」と問い合わせる方法も有効です。

自治体の担当部署は地域の親の会を把握している場合が多く、担当者から直接連絡先を教えてもらえたりします。

実際、栃木県の公式サイトでは発達障害関連の各団体の紹介ページが設けられています。(栃木県ホームページ『発達障害に関する情報を掲載しているサイトや関係機関のサイトをご紹介します。』)

このように、自治体のホームページや相談窓口は信頼できる情報源です。

【方法3】インターネット検索やSNSの活用

インターネットで「地域名+知的障害 親の会」「地域名+家族会」と検索するのも一つの手です。

例えば「大阪府 知的障害 親の会」「○○市 家族会」といったキーワードで検索すると、地域の親の会のブログや連絡先情報が見つかることがあります。

また、FacebookなどSNS上で親の会のページやグループが開設されている場合もあります。

ただしインターネット上の非公式情報は更新が止まっていることもあるため、できれば公式な窓口で確認をとると安心です。

【方法4】周囲の支援者や学校経由で探す

お子さんが特別支援学校や通所支援施設を利用している場合、そこの職員や他の保護者に親の会を紹介してもらえることもあります。

同じ学校の保護者同士でミニ親の会的な集まりができているケースもありますので、身近なネットワークに尋ねてみるのもよいでしょう。

療育センターや医療機関のソーシャルワーカーが地元の親の会を知っている場合もあります。

以上の方法を組み合わせれば、きっとご自身の地域で活動する親の会にたどり着けるはずです。

最近は自治体の市民活動支援センター子育て支援拠点でも、地域の親の会情報を提供していることがあります。

焦らずに情報収集してみてください。

参加前に確認しておきたいポイント

親の会を見つけたら、いよいよ参加の一歩です。

ただし入会・参加にあたっては、「こんなはずじゃなかった」とならないよう、事前にいくつか確認しておくと安心です。

以下に参加前の確認ポイントをまとめました。

確認ポイント内容
対象となる会員一般的に知的障害・発達障害のあるお子さんの親や家族が対象ですが、ご本人や支援者も参加できる場合があります。
入会資格を事前に確認しましょう。
活動内容・頻度定例の交流会(茶話会)、勉強会や講演会、レクリエーション活動、機関誌の発行など様々です。
開催頻度(月1回程度か、不定期か)や活動の雰囲気(和やかなおしゃべり中心か、議題を決めて話し合うのか)も把握しておきます。
役割分担と参加スタンス大きな親の会ではイベント運営などで会員が役割を担うこともあります。
運営ボランティアは強制ではありませんが、時間に余裕がない場合は無理のない範囲で参加できるか確認しましょう。
入会手続き・会費入会方法は各親の会によります。
多くは所定の申込書提出や担当者への連絡で手続きを行います。
年会費が必要な場合もあり、金額や会員区分は団体によって異なります。
例えば東京都手をつなぐ親の会では、賛助会員(活動を支援する会員)の年会費が「個人一口3,000円」と案内されています。
個人会員(家族)については、まず地域の支部に申し込む形のため、会費も含め支部で確認するのが確実です。
プライバシー配慮会で知り得た個人情報やプライバシーは会の中だけの話とし、外部には漏らさないのがマナーです。
多くの親の会でこうした取り決めがされています。
安心して話せる雰囲気か、不安な場合は事前に運営に問い合わせてもよいでしょう。
見学や体験参加入会前に一度見学したり、イベントに体験参加できる場合もあります。
初回から入会が不安なときは、その旨問い合わせると対応してもらえることがあります。
実際に参加して雰囲気を掴んでから入会を判断しても遅くありません。

上記のポイントを確認しておけば、親の会に参加した後でギャップを感じるリスクを減らせます。

「思っていたより本格的な活動で戸惑った」「自分の欲しい情報と少し違った」などのミスマッチを防ぐため、会の規模や方針、求めるものが合っているかを事前に見極めることが大切です。

特に大規模な親の会は組織だった運営をしていますので、ゆるやかな交流だけを希望する場合は小規模な親グループの方が合うこともあります。

その地域に複数の親の会がある場合は、いくつか比較検討してみても良いでしょう。

まとめ

まとめ

知的障害の親の会は、親御さんたちにとって悩みを共有できる貴重な仲間であり、同時に社会をも動かす力を持った存在です。

日本全国に広がるネットワークと長年の実績に裏打ちされた活動は、専門家や行政からも信頼を得ています。

実際に参加した親御さんからは「もっと早く親の会を知りたかった」「孤独だと思っていたが仲間に出会えて心強い」という声が聞かれます。

ぜひ勇気を出して一歩踏み出し、お近くの親の会の門戸を叩いてみてください。

最初は不安かもしれませんが、温かく迎えてくれる先輩方がきっといるはずです。

同じ思いを持つ仲間とつながることで、悩みは半分に、喜びは二倍にもなるでしょう。

専門家や行政とも連携しながら、親の会は皆さんの子育てとこれからの人生をサポートしてくれる心強いパートナーです。

「悩んだらひとりで抱え込まないで」——知的障害の親の会はいつでもあなたを歓迎しています。

(※会費や活動内容、掲載団体数は年度や地域で変わります。最新情報は各団体・自治体の案内でご確認ください。)

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