目次
対象者の基本データ
病名 | 1型糖尿病 |
---|---|
性別 | 男性 |
支給額 | 年額 約94万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
これまでの健康診断で特に指摘を受けたことはなかったのですが、あるときからのどの渇きや頻尿の症状を自覚するようになりました。
知人より痩せてきたのではないかと言われ、体重を測定したところ確かに体重が減少していました。
頻尿の症状も気になっていたことから近医を受診することを決意。
初診時の検査で、尿糖、尿たんぱく、血糖値などに異常所見が認められ、すぐに専門医での精査加療が望ましいと判断され転医することになりました。
この頃の自覚症状としては、頻尿などのほかに、睡眠中に足がつることもあり睡眠の質が低下していました。
紹介先の病院で1型糖尿病と診断され、インスリン治療を開始し、現在も治療を継続しています。
体を動かすと低血糖になることもあり、食事の内容によってインスリンを追加するなど、日常生活には制限があり心身ともに体調管理が難しいと感じておられます。
治癒する病気ではなく、今後、人工透析が必要になる可能性もあるため、将来への不安は大きいご様子です。
そんなとき、経済的な支援がないかネットで検索をしていたところ、障害年金を受給しておられる方のブログを見つけました。
ご自身も対象になるのではないかと当事務所へお問合せいただきました。
申請結果
糖尿病の初診日は、特定するのに困難を極めることがあります。(ポイント①)
ご病気の特性から、ゆっくりと進行することが多く、いざ初診の証明を取得しようとしても、すでにカルテの保存期間の5年を経過しておりカルテが破棄されていることも見受けられます。
障害年金の申請では、この初診日の証明がたいへん重要です。
今回は、カルテの保存期間中に初診日があり、スムーズに初診日の証明である受診状況等証明書を入手できました。
初診日時点で厚生年金に加入されていること、保険料の納付要件も満たしていることを確認し、診断書作成の準備に進みました。
糖尿病での障害認定基準は、検査数値が明確に定められており、ご依頼者様は現在の症状を基準に照合すると3級相当の状態でした。(ポイント②)
現在の状態では間違いなく障害認定基準を満たしておりましたが、障害認定日頃の状態については検査数値のわかるものをお持ちではなく、医療機関に問い合わせる必要がありました。
障害認定日頃も現在と同じ病院を受診されていたため、医療機関には「障害認定日頃」「現在」の2枚の診断書を作成いただくよう依頼しました。
医師に確認したところ、障害認定日頃は残念ながら検査結果が障害状態には達しておらず、診断書の作成は不可とのお返事でした。(ポイント③)
そのため、遡及請求はあきらめ、現在の症状を示す診断書のみ作成いただき、事後重症請求を行うこととしました。
結果、無事「障害厚生年金3級」と認定されました。
ポイント1】糖尿病による障害年金の特徴
糖尿病の特徴は、10年~20年と長い期間を掛けてゆっくりと進行し、最終的に慢性腎不全に至る事が多いということです。
障害年金を請求するためには、初診日を特定することが重要です。
しかし、糖尿病が悪化してイザ障害年金の申請を試みた時には既に病院が無くなていたり、カルテが破棄されているという理由で本来なら受給出来た障害年金を泣く泣く諦めるというケースも珍しくありません。
糖尿病と診察された際は、最初は自覚症状が無く、油断してしまうと思います。
それでも、最悪に備えて証拠となる資料を必ず残すようにしてください。
例えば以下のようなものになります。
- 診察券
- お薬手帳
- 病院の領収書
- 健康診断の結果
- 食事療法などのアドバイスを受けたリーフレット
また、現物を残すのに加えて最近ではスマートフォンで撮影してクラウドに写真を残しておくというのもオススメです。
【ポイント2】糖尿病による障害認定基準
糖尿病での障害認定基準は平成28年6月1日に一部改正がなされています。
必要な治療を行ってもなお、血糖コントロールが困難な症状の方は、障害等級「3級」と認定されます。
具体的には以下の全ての条件を満たす方が対象となります。
①90日以上継続してインスリン治療を行っているもの
②以下のいずれかに該当するもの
- 空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/ml未満を示す
- 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるもの
- インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの
③日常生活の制限が一定程度のもの
※ただし症状、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定される可能性があります。
【ポイント3】「事後重症請求」と「遡及請求」
本来、障害年金は障害認定日(原則初診日から1年6ヵ月後)より請求することが出来ますが、何らかの理由で請求しないまま現在に至った場合は『今後の障害年金』に加えて『過去の障害年金』を請求することも可能です。
『これからの年金』を請求する方法を事後重症請求、『過去の年金』を請求する方法を遡及請求と言い、審査の結果は、上記請求を同時に行った場合であっても、それぞれに別個に結果がでます。
つまり「これからの年金は支給」するけれど、「過去の年金は不支給」という結果もあり得ます。
注意点としては『遡及請求』は事後重症が認められて初めて認定されるため、必ず事後重症請求を『最初または同時』に行う必要があります。
遡及請求を行う時は通常よりも診断書代等の費用がかかりますので、認定の可能性や費用等を考慮しつつ、検討してみてください。