知的障害のあるお子さんのタブレット学習

近年、ICT(情報通信技術)の進化と支援方法の多様化により、学習支援ツールは目覚ましい発展を遂げています。

文部科学省が推進するGIGAスクール構想の実現により、特別支援教育の現場でも児童生徒一人ひとりにタブレット端末等が行き渡りつつあります。

こうした背景から、知的障害のあるお子さんの学習支援にタブレットを活用することが大きな注目を集めています。

しかし、実際に「タブレット学習」は知的障害のある子どもにとって効果があるのでしょうか?

どんな教材やアプリを選べば良いのか、デメリットや注意点はないのでしょうか?

この記事では、専門家の知見や研究結果、実際の事例に基づきながら、知的障害のある子どものタブレット学習についてメリットと支援効果、適した教材の例、さらには活用時の注意点までわかりやすくご説明したいと思います。

知的障害のある子どもの学習上の課題とは

知的障害のあるお子さんは、一般的な学習方法では様々な困難に直面しがちです。

例えば、学習によって得た知識や技能が断片的になりやすく、学んだことを実生活で応用することが苦手だと指摘されています。

また、日常生活の経験が不足しがちなため、抽象的な概念の理解や計画を立てるといった実行機能の面でつまずきやすく、短期記憶(ワーキングメモリ)が弱いことで柔軟な思考が難しい場合もあります。

その結果、問題解決の場面で一つのやり方に固執してしまう傾向も見られます。

学齢期になると、年齢相応に求められる読み書きや計算など基礎的学習技能の習得が難しく、集団授業のペースについていけないお子さんも少なくありません。

コミュニケーション面では、言語的なやりとりや相手の意図を正確に理解することが難しい場合があり、周囲との意思疎通にギャップが生じることもあります。

さらに注意力や行動面での自己コントロールが難しく、衝動的な行動が見られるケースもあります。これら複合的な課題に対処するためには、個々の特性に合わせた柔軟な支援と工夫が必要になります。

こうした学習上の課題に対して、従来は個別指導や教具の工夫などアナログな対応が中心でした。

しかし現在では、タブレット端末をはじめとするデジタル技術が新たな支援手段として期待されています。

次章では、タブレット学習がこれらの課題をどのように補い、子どもの学びを支えてくれるのか、そのメリットと効果を見ていきましょう。

タブレット学習がもたらす効果

タブレットを活用した学習には、知的障害のあるお子さんにとって多くのメリットがあると専門家は指摘しています。

文部科学省も新学習指導要領の中で障害種別に応じたICT活用の必要性を明示し、授業効果を高める指導の工夫を求めています。

ここでは、タブレット学習の主なメリットをいくつか挙げ、その効果を解説します。

視覚・音声など多感覚でわかりやすい学習

タブレットは文字、音声、画像、動画などマルチモーダル(多感覚)な情報提供が可能です。

文字を読むのが苦手なお子さんには音声解説や読み上げ機能、理解が難しい概念はイラストやアニメーションで示すことで、より直感的に内容を理解できます。

実際、デジタル教材「天神」ではアニメーション講義や音声読み上げ機能によりこのマルチモーダル学習を実現しています。

こうした視覚・聴覚を総合的に使った学習は、理解度を高め記憶の定着にも効果的です。

スモールステップで成功体験を積み自信につながる

多くのタブレット教材は学習内容を細かなステップに分解し、一つひとつ段階的に習得できるよう設計されています。

ハードルを低く設定し、小さな達成の積み重ねによって「できた!」という成功体験を得やすくすることで、学習への意欲と自己肯定感を育みます。

従来は失敗続きで自信を失いやすかったお子さんも、ゲーム感覚で楽しみながら練習を重ねられるため、「もっとやってみよう」という前向きな気持ちを引き出すことができます。

直感的なタッチ操作で「書けない」ハンデを補完

キーボード入力やペンでの記述が難しいお子さんでも、タブレットのタッチ操作であれば直感的に回答や操作が可能です。

研究においても「タッチパネル式のタブレット端末は操作方法が直感的で、重度知的障害児にとって分かりやすい」ことが示されています。

例えば、ある特別支援学級では作文の下書きをノートではなくタブレット上で行ったところ、文字を書く苦痛が減り、指一本でのタイピングでも思考を活字化しやすくなったため集中して取り組む時間が延びたという報告があります。

また別のケースでは、iPadの音声入力機能を活用することで、書字が苦手な小学2年生の児童が今まで表現できなかった思いを次々と話し出し、原稿用紙3枚分もの文章を作ることができました。

音声認識の誤変換や書字練習の機会減少といった課題は残るものの、ICTのおかげで初めて自分の考えを大量にアウトプットできたこの体験は、本人の大きな自信につながったといいます。

個別最適化されたペース配分で学習しやすい

タブレット学習なら、お子さん一人ひとりの習熟度やつまずきに合わせて柔軟に進度を調整できます。

理解が不十分な単元は繰り返し練習したり、逆に得意分野は学年の枠を超えて先取り学習するといったオーダーメイドの学習計画が立てられます。

例えばクラウド型教材「すらら」では、小中高の範囲を無学年式で学べるうえに、20万問の問題データベースから苦手を自動分析して過去にさかのぼり復習する機能があります。

このように一律ではない個別最適化によって、「分からないまま次に進んでしまう」ことを防ぎ、お子さんのペースで着実に力を伸ばすことが可能です。

楽しみながら集中力アップ・意欲向上

タブレット教材の多くはゲーム的な要素や視覚効果を取り入れており、子どもの興味を引きつけて学習への集中を持続させる工夫があります。

実際に重度知的障害のある児童2名を対象とした実践では、「タブレット使用中、注意集中を長時間持続できた」「物の弁別・認知を促す学習が可能になった」と評価され、従来のパソコンでは得られなかった変化が見られたと報告されています。

また、特別支援学級の現場でも「タブレットで黒板の書き写し負担を減らした結果、児童が好きな授業に意欲的に参加でき、『楽しかった!』と言って帰ってくることが増えた」といった嬉しい変化が確認されています。

このようにICTの活用によって学習への前向きさが引き出され、集中できる時間が延びる効果が期待できます。

以上のように、タブレット学習は知的障害のあるお子さんの直面する課題を補い、本来持っている力を発揮させる強力なツールになり得ます。

その具体的な効果を、課題と対応策の対応表にまとめると次のとおりです。

学習上の課題ICT・タブレットによる支援例
文字の読み書きが苦手(読字・書字の困難)音声読み上げ機能で文章を読み上げたり、音声入力で文字入力を代替。
紙に書く負担を軽減し、文章表現力を引き出せる事例があります。
抽象的な概念の理解が難しい写真・イラスト・動画・アニメーションなど視覚的に概念を示す教材で理解を促進。
文字だけでは伝わりにくい内容も、多感覚の提示によって直感的に学習できます。
集団授業のペースについていけない個々の理解度に合わせて進められる個別学習が可能。
苦手な単元は繰り返し練習し、得意な分野は先取りするなど柔軟に調整できます。
注意が散りやすく学習意欲が続かないタブレットのインタラクティブな操作やゲーム性で興味を引き、楽しく学べる工夫が満載。
研究でも注意集中時間の延長が確認されています。小さな成功体験の積み重ねが自信につながり意欲アップ。
板書の書き写しやノート整理が苦手カメラ機能で黒板の内容を撮影・拡大表示し、見落としなくノートに記録可能。
書き写しの負担を減らすことで授業内容の理解に集中でき、授業参加への意欲向上につながります。
指示の理解や行動の切り替えが難しい音声ガイド付きの指示や絵・ピクトグラム等によるわかりやすい提示が可能。
タイマーの視覚表示で休み時間から授業への切り替えを助けるなど、学習以外の場面でもICTが支援に役立ちます。

上記のように、タブレット端末やアプリのもつ多彩な機能は、知的障害のある子どもの「分からない」「できない」をサポートし、「分かる喜び」「できた自信」へとつなげるポテンシャルを秘めています。

ただし重要なのは、こうした効果を最大限引き出すためにお子さん一人ひとりに合ったツールや使い方を選ぶことです。

次の章では、実際に利用できるタブレット学習教材・サービスの例をいくつかご紹介します。

知的障害のある子ども向けタブレット学習教材の例

現在、市場には発達障害や知的ハンディのある子どもの学習を支援するために工夫されたデジタル教材や通信教育サービスが多数提供されています。

ここでは代表的なものをピックアップし、その特徴を比較してみましょう(※各サービスの詳細は公式サイト等をご確認ください)。

サービス名主な特徴・サポート内容
すらら小学校~高校範囲を無学年式で学習可能なオンライン教材。
お子さんの学力レベルに合わせてカリキュラムを自動調整できます。
発達障害児支援のノウハウが豊富で、知能検査KABC-Ⅱに基づく学習計画提案やペアレントトレーニング手法を取り入れたサポートも充実。
講義はアニメキャラクターが優しく解説し、文字・音声・イラストを組み合わせた多感覚学習で理解を促進。
20万問を超える問題から弱点を自動分析してさかのぼり復習する機能や、トークン(ポイント)を集めるゲーム要素で楽しく継続できる工夫があります。
まるぐランド for HOME大手通信教育ベネッセによる発達特性のある子向け教材。
毎日のタブレット学習+週1回のオンライン個別指導を組み合わせたハイブリッド型家庭学習サービスです。
一人ひとりの認知特性や読み書きスキルを診断し、その結果に応じた最適な学び方を提供します。
教科学習ではなく読み書きの基礎に特化し、専門スタッフによる定期的なカウンセリングも受けられます。
1日10分程度で無理なく続けられるよう設計されています。
気分や調子に合わせて「がんばりモード」と「ゆっくりモード」を選択可能など、子どものペースに寄り添った工夫が凝らされています。
天神(てんじん)発達障害や不登校の子にも支持されるオールインワンデジタル教材。
豊富な画像やアニメーションを駆使した一問一答形式で飽きずに学習を進められます。
小学生版では文章の音声読み上げ機能を搭載し、読むことが苦手なお子さんでも安心です。
無学年制を採用しているため学年にとらわれず、自分のレベルに合った内容からスタートできます。
「書くよりタップの方が考えを表現しやすい」「集中力が続かない子でも取り組みやすい」など、多様な特性を持つお子さんに選ばれています。
スマイルゼミ年長~高校生対応の通信教育。専用タブレットを使い、主要5教科に加えてプログラミングなど幅広く学習できます。
学習を進めるほどアバターの着せ替えアイテムが手に入る、一定の目標を達成するとミニゲームで遊べる等、ゲーム感覚でやる気を引き出す工夫が豊富です。
画面デザインはシンプルで迷いにくく、小さな子でも直感的に操作できます。
基本的には学校の学年進度に沿ったカリキュラムです。
国語・算数については無学年式でさかのぼり学習できる「コアトレ」機能もあり、つまずきのフォローも可能です。
RISU算数算数に特化したタブレット学習教材。
専用タブレット上で、お子さんの回答状況に応じてAIが出題難易度や範囲を自動カスタマイズしてくれるのが特徴です。
ゲームのステージをクリアしていくような感覚で計算力を伸ばすことができ、楽しく演習を継続できます。
算数が好き・得意なお子さんにはどんどん先の内容に挑戦させてあげられますし、苦手な単元は繰り返し強化することで基礎力を着実に固めることができます。

※上記に挙げたもの以外にも、公教育で配布されたタブレットに入っている基本機能や無料アプリで活用できるものが多数あります。たとえば、文章を読み上げてくれるOCRアプリや、声の大きさを視覚的に表示して発声練習に使うアプリ、漢字の筆順をアニメーションで示す教材などが効果を発揮した事例もあります。お子さんの苦手分野や支援の目的に応じて、こうしたツールを組み合わせていくことで総合的な学習支援システムを構築できるでしょう。

タブレット学習の注意点

メリットの多いタブレット学習ですが、一方で保護者の方が懸念する点や注意すべきポイントもあります。

事前にデメリットと対策を知っておくことで、安心してタブレットを活用することができます。

ここでは代表的な注意点を挙げ、対策とともに解説します。

視力への影響や眼精疲労

長時間の画面凝視による視力への影響や眼精疲労の懸念です。

対策としては、1回の使用時間を年齢に応じて区切り、適度に休憩を入れる習慣をつけましょう。

画面から目を離す時間を作ったり、夜間は画面を見ないようにするなどルールを決めることも有効です。

端末のブルーライトカット機能を使ったり文字サイズを大きくすることで、目の負担を軽減する工夫もできます。

娯楽コンテンツへの依存

YouTube動画やゲームなど、学習のつもりがいつの間にか遊びに夢中になってしまうのではないかという不安です。

対策としては、タブレットには魅力的な誘惑が多いため、家庭でのルール決めが不可欠です。

利用時間帯や視聴するアプリをあらかじめ制限したり、保護者用の見守り設定で学習アプリ以外は起動できないようにすることもできます。

学校の休み時間に好きなアプリを始めてしまい授業開始後も切り替えられない子がいたという報告もありましたが、その場合は一時的に端末を預かるなど環境を整えることで対応可能です。

「書く力」が育たないのではないかという心配

タブレットばかりで「書く力」が育たないのではないかという心配です。

手書き練習が疎かになり漢字や英単語を正しく書けなくなるのではという点です。

この懸念はもっともです。

解決策の一つはハイブリッド学習の導入です。

タブレットで効率よく理解・暗記しつつ、並行してノート筆記やドリルで書字練習を取り入れることでバランスを取りましょう。

例えばタブレットで学んだ漢字を実際に書いてみる時間を設けるなど、デジタルとアナログを組み合わせることで「読む・書く・入力する」力を総合的に伸ばすことができます。

コストや機器トラブルの問題

専用教材の場合、初期費用や月額料金が負担になることがあります。

またタブレット自体の故障やインターネット接続トラブルへの不安もあるでしょう。

各教材サービスで料金体系は様々です。

内容と効果を吟味し、お子さんに本当に合うものを選ぶことが大切です。

無料体験期間を活用して試してみたり、学校から配布された端末で使える無料アプリから始めてみるのも良いでしょう。

機器については基本的に学校から貸与されたものなら保証やサポートがありますし、家庭用端末でもフィルタリング設定やアップデート管理を保護者が行うことで安全に使用できます。

まとめ

まとめ

知的障害のあるお子さんの学習をサポートする上で、タブレット学習は大きな可能性を秘めています。

もちろん魔法のように全ての問題が即座に解決するわけではありませんが、前述のように適切なツールを選び工夫して活用すれば「わかる」「できた」という喜びを引き出し、学習意欲や自信へとつなげることができます。

実際、特別支援教育の現場からは「1人1台端末は、その子に合った使い方さえ見つかれば、今までになかった大きな効果を生む」という声も上がっています。

また、タブレットによる学びの効果は学習面に留まらず、将来の生活自立や社会参加への土台にもなり得ます。

ある教師は「特別な支援を要する者こそ、積極的にICT機器を利用することで、将来自立的に生活できるようになる」と述べています。

デジタル技術は、お子さんの困難を補完する補助輪であると同時に、新たな可能性を切り拓くための翼にもなり得るでしょう。

お子さん一人ひとりに合ったタブレット学習の方法を模索し、ぜひ「学ぶ喜び」を感じられる経験を増やしてあげてください。

この記事が、適切な情報とサポートを得ながらタブレットという現代のツールを上手に取り入れて、お子さんの未来の可能性を広げる一助になりましたら幸いです。

「入院中なので事務所へ行けない」「家から出られない」「人と話すのが苦手・・・」という場合は、ホームページのお問合せフォーム以外にも電話やLINEなどでお気軽にご連絡下さい。

電話やメール、LINEなどでご質問いただいても、必ず当事務所にご依頼頂かなければいけないということではございません。
お問合せ頂いた後に当センターから営業の電話などをすることもございませんので、その点はご安心下さい。
ゆっくりご検討下さい。

お電話での無料相談はこちら

無料診断・相談はコチラ

LINE@での無料相談はこちら

当事務所では面会やお電話に加えてLINEでのやりとりも対応しております。
いろいろな事情で面会やお電話でのやりとりが難しい場合は、お気軽にラインでお問合せ下さい。

LINE友達追加