ペアレントトレーニングとは?

子育てをしていると、「何度注意しても同じことの繰り返し…」「つい怒鳴ってしまい自己嫌悪に陥る」といった悩みを抱える親御さんも多いのではないでしょうか。

特に未就学〜小学生のお子さんをお持ちの方は、言うことを聞いてくれなかったり、かんしゃくを起こしたりするお子さんの対応に頭を抱えることもあるかもしれません。

また、お子さんの発達について専門家からペアレントトレーニングの受講を勧められ、「一体どんなことをするのだろう?」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。

本記事では、ペアレントトレーニング(略してペアトレとも呼ばれます)とは何か、その目的や期待できる効果、具体的なやり方について、わかりやすくご説明したいと思います。

悩める親御さんが少しでも肩の力を抜き、前向きに子育てと向き合えるヒントになれば幸いです。

ペアレントトレーニングとはどんなもの?

ペアレントトレーニングとは、親御さん自身が子どもへの関わり方のコツを学ぶためのプログラムです。

もともとは1960年代にアメリカで開発され、知的障害や自閉スペクトラム症(ASD)など発達障がいのある子どもの親を対象として始まった経緯があります。

「親は子どもの最良の治療者である」との考えのもと、専門機関で行う療育と並行して家庭でも子どもを適切に支援できるようにすることが最初の目的でした。

親が家庭で関わり方を工夫することで、子どもが療育に取り組む時間や効果を高めようとしたのです。

ペアレントトレーニングは専門的には心理教育的アプローチに分類されます。

難しい言葉ですが、簡単に言えば「親がほめ方や指示の出し方など具体的な養育スキルを身につけ、子どもの行動を良い方向に変えていくためのプログラム」という意味です。

親の関わり方を変えることで、子どもの望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすことを目指します。

例えば「上手にできたときにしっかり褒める」「指示の伝え方を工夫して子どもが理解しやすいようにする」など、具体的なテクニックを学び実践していきます。

その結果、子どもの健やかな成長発達を促すことにつながるとされています。

実際、多くの研究でペアレントトレーニングにより親の育児スキル向上やストレス軽減、さらには子どもの適応的な行動の増加や問題行動の改善などの効果が確認されています。

こうした科学的なエビデンスの蓄積から、ペアレントトレーニングは発達支援や児童心理の分野で世界的に注目され、推奨されている手法です。

当初は発達障がい児の保護者向けに始まったペアレントトレーニングですが、現在では対象がさらに広がっています。

日本では、発達障がいに限らず「子どもの問題行動に悩むご家庭の支援プログラム」として独自に発展してきた経緯があります。

療育の提供が十分でなかった背景もあり、家庭での困りごとの軽減策として受け入れられてきました。

その結果、不登校や反抗挑戦性のある子ども、虐待を受けた子、里親・養子のケースなど、発達障がい以外の状況にも対応したプログラムが開発されるなど、様々な場面で活用されるようになっています。

要するに、ペアレントトレーニングは「発達に特性がある子」だけでなく、子どもの行動やしつけで困りごとのあるすべての親御さんにとって有益な学びの場と言えると思います。

対象年齢も特に厳密な決まりはありませんが、一般的には幼児〜小学生くらいのお子さんをもつ親御さんが参加するケースが多いです。

お住まいの地域やプログラムによって参加者の傾向は異なりますが、もしお子さんがまだ小さくなくても子育てに悩んでいる場合は受講できるプログラムがないか問い合わせてみる価値があります。

発達障がいの正式な診断が出ていないお子さん(いわゆるグレーゾーンのお子さん)でも参加可能な場合も多いので、遠慮せず相談してみてください。

ペアレントトレーニングの目的と期待できる効果

ペアレントトレーニングは、親子双方にとって様々なメリットがあります。

親御さんが適切なかかわり方を習得することで親子関係が良好になり、結果的に子どもの行動面・情緒面にも良い変化が生まれるのです。

ここでは、子どもと親それぞれに期待できる効果を見てみましょう。

子どもへの効果・メリット親への効果・メリット
・何が良い行動で何が良くない行動かが明確になり、適切な行動が増えて問題行動は減っていく
・「良いことをすれば褒めてもらえるんだ」と感じられ、自信や自己肯定感が育つ
・親に自分の特性や気持ちを理解してもらえることで安心し、日常のストレスが減る
・子どもの問題行動の理由(背景)や心理がわかるようになり、むやみに怒ったり悩んだりしなくなる
・子どもへの具体的な対処法を身につけることで、落ち着いて自信をもって子育てができる
・グループ研修の場合、他の家庭の体験談や工夫を知ることで視野が広がり、自分ひとりで抱え込んでいる孤独感が薄れる

ご覧のように、ペアレントトレーニングを通じて子どもは褒められる経験を積み重ねて自信をつけ、親子双方がストレスの少ない環境を築ける可能性があります。

親御さんにとっても、「どう接するのが正解かわからない…」という不安が和らぎ、子育てに前向きに取り組めるようになるでしょう。

実際、「子どもを褒めるとこんなにも行動が変わるとは思わなかった」「他の保護者と悩みを共有できて心強かった」といった声も多く報告されています。

ペアレントトレーニングは親だけでなく子どもの生活もスムーズにし、親子の悪循環を好転させる効果が期待できるのです。

ペアレントトレーニングのやり方・進め方

では、具体的にペアレントトレーニングではどのようなことを行うのでしょうか?ここでは典型的なプログラムの流れや内容について説明します。

基本的な実施形式

日本で一般的なペアレントトレーニングは、保護者同士が数名のグループとなって講座を受ける形式です。

実施機関によって多少異なりますが、1回あたり約1.5〜2.5時間の講座を週1回程度受講し、合計5〜10回ほど連続で行うプログラムが多く見られます。

各回の講座では講義(インプット)とワーク(演習)の両方が行われます。講義パートでは子どもの発達特性に関する知識や具体的な事例・対応法について専門家から学びます。

ワークパートでは、学んだ内容を各参加者が自分の子どものケースに当てはめて考える作業を行います。

例えば「うちの子の場合はどんな褒め方が効果的だろう?」といった具合に、家庭での対応策をグループで話し合ったり考えたりします。

そして、講座で学んだことは家庭で実際に試す「ホームワーク(宿題)」として出されるのが一般的です。次回の講座で宿題の成果や悩みを持ち寄り、ファシリテーター(進行役の専門家)や他の参加者と振り返りを行います。

このように「学ぶ→家庭で実践→振り返る」を繰り返すサイクルでプログラムが進んでいきます。

グループ形式で進める利点は、同じ悩みを持つ親同士で共感し支え合えることです。

自分の家庭だけではないと知ることで気持ちが楽になりますし、他の家庭の工夫や成功例が参考になるという声も多く聞かれます。

ファシリテーターからアドバイスをもらえるのはもちろんですが、一緒に受講する仲間から得られる学びや励ましも大きな財産となるでしょう。

主な学習内容(コアスキル)

ペアレントトレーニングで扱うテーマは多岐にわたりますが、国内の公式ガイドラインでは以下の6つのコア要素が重視されています。

プログラムによってすべてを網羅するとは限りませんが、多くの場合これらを組み合わせて指導が行われます。

子どもの良いところを探す

親が否定的な面ばかりに目を向けるのではなく、わずかな成長や長所も見逃さず積極的に認めて褒める視点を養います。

例えば「全部はできなくても、25%できていたらOKとする」くらいの気持ちで、小さなできたことを見つけて褒める練習をします。

これにより親子のポジティブな関わりが増え、子どもも「認めてもらえた」と感じて自信につながります。

子どもの行動を3つのタイプに分ける

子どもの日常の行動を(1)望ましい行動、(2)望ましくない行動、(3)絶対に許せない行動——という3つのカテゴリーに分類して整理します。

そして、それぞれのタイプの行動を子どもがとったときに親はどう対応するかをあらかじめ決めておきます。

良い行動をしたら思い切り褒める、一方で軽微な困った行動なら注意しすぎず見守る、どうしても許せない行動(危険行為など)には毅然と対応する、というように対応のメリハリを学びます。

対応があらかじめ明確になることで、親も感情的にならず一貫した態度をとりやすくなります。

行動の理解(ABC分析)

子どもの問題行動の背景を分析する手法として、ABC分析と呼ばれるものも学ぶことがあります。

Aは先行条件(Antecedent)=行動のきっかけ、Bは行動そのもの(Behavior)、Cは結果(Consequence)の頭文字です。

例えば「おもちゃを片付けなかった(行動B)」場合、直前に「親が急かした(A)」から反発したのか、結果として「親が代わりに片付けてしまった(C)」から学習されてしまったのか——という具合に、行動の前後関係を整理して「なぜその行動が起きるのか」を考えます。

こうした分析により子どもの行動の理由やパターンを把握できると、「どうしてうちの子はこんなことをするの?」というモヤモヤが軽減し、冷静に対処しやすくなります。

環境調整

子どもが良い行動をしやすい環境を整える工夫も重要です。

周囲の環境要因が子どもの行動に与える影響は大きいため、家庭内の環境を見直して改善します。具体的には、「注意がそれやすい子なら部屋の掲示物を減らし、テレビやゲームは時間を決める」「感覚過敏がある子にはパーテーションや遮音カーテンで刺激を和らげる」など、お子さんの特性に応じた配慮を加えていきます。

着替えが苦手なら手順表を貼って見通しを持たせる、勉強に集中できないなら机の周りを整理する、といった工夫ひとつで問題行動が減ることも多々あります。

環境を整えることは即効性が高く、子どもも親もストレスを減らせる有効な手段です。

子どもへの指示の出し方

子どもに何か行動を促すときの伝え方についても学びます。

「早く宿題しなさい!」など頭ごなしに叱るのではなく、子どもが受け入れやすい伝え方のコツを身につけます。

ポイントは、穏やかな口調で具体的に伝えることです。

例えば「イライラを抑えて静かな声で近づいて伝える」「○時になったら宿題を始めようね、と予告する」等、子どもが混乱しない指示の仕方を練習します。

感情的に怒鳴ってしまうと子どもは萎縮したり反発したりして逆効果ですし、親自身も後で自己嫌悪に陥ります。

適切な指示出しは良好な親子関係を保つ基本スキルと言えるでしょう。

不適切な行動への対応

子どもがかんしゃくを起こしたり問題行動をした際の落ち着いた対処法も学びます。

原則として、危険がない限りは親が過度に反応しすぎない(=意図的に無視する)ことを訓練します。

例えば、子どもが癇癪を起こして大声でわめいているときに親も感情的に叱りつけると、事態はエスカレートしがちです。

それよりも、安全を確保した上でしばらく見守り、子どもが落ち着いたタイミングで静かに話を聞く方が効果的です。

また日頃から良い行動をしたときにすかさず褒めることで、子どもは「注目を集めるために悪さをする」必要がなくなり、問題行動の頻度が減っていきます。

ペアレントトレーニングでは、このように望ましい行動に注目し、望ましくない行動には冷静に対処する姿勢を徹底する方法をロールプレイなどで練習します。

以上が主要な学習テーマの概要です(※プログラムや講師により若干アプローチが異なる場合がありますが、大枠の考え方は共通しています)。

実際の講座では、これらのスキルを毎日の生活の中でどう応用するかを具体的に考え、家庭で試してみてフィードバックをもらう——という丁寧なプロセスが取られます。

さまざまなプログラム

なお、一口にペアレントトレーニングと言っても、その具体的なプログラムにはいくつかの方式(流派)があります。

日本国内でよく知られているものとして、例えば「精研式・奈良式」(奈良教育大などで開発)、「肥前式」(佐賀県肥前医療センターで開発)、「鳥取大学式」などが挙げられます。

精研式(奈良式)はもともと米国でADHD児の親向けに開発された手法を基にしており、先述の「行動を3タイプに分けて対応を決める」スタイルが特徴です。

肥前式は知的障がいを伴う自閉症児の親向けに生まれた経緯があり、困りごととなっている特定の行動についてグループで解決策を考えるワークが充実しています。

鳥取大学式は応用行動分析(ABA)の理論に基づき、行動の前後(きっかけと結果)を変えて問題行動を減らすことに重点を置いたプログラムです。

名称こそ色々ありますが、最終的な目標(親のスキルアップによる子どもの行動改善)や核となる考え方は共通しており、先に紹介したコアスキルの組み合わせ方やアプローチの違いに過ぎません。

いずれのプログラムでも基本的な効果は同様に期待できますので、あまり難しく考えすぎなくても大丈夫です。

ペアレントトレーニングを受けるには?

ここまで読んで、「ぜひ自分もペアレントトレーニングを受けてみたい」と感じた方もいるかもしれません。

では、実際にどこで受講できるのでしょうか。

ペアレントトレーニングは現在、全国各地の様々な機関で実施されています。

公的な機関では、各都道府県にある発達障害者支援センターや児童心理治療施設、教育センター、保健センターなどで定期的に保護者向け講座が開かれている場合があります。

自治体主催の子育て支援事業の一環として開催されることも多く、まずはお住まいの市区町村の広報やウェブサイトで案内がないか探してみると良いでしょう。

また、小児科や小児精神科のある病院など医療機関でペアレントトレーニングを取り入れているところもあります。

主治医やカウンセラーに相談すれば情報が得られるかもしれません。

近年では、公的機関以外にも民間のNPO法人や教育サービス事業者、有志の専門家グループなどがペアレントトレーニング講座を提供するケースも増えてきました。

民間の場合は有料になりますが、その分オンライン開催で全国どこからでも参加できたり、日程を自由に選べたりと利便性が高いものもあります。

実際、インターネット経由でビデオ会議システムを使い、自宅にいながら他県のプログラムに参加している方もいます。

コロナ禍以降はオンライン開催のニーズも高まり、仕事や育児で忙しい親御さんでも受けやすい環境が整いつつあります。

参加方法としては、各実施団体のホームページや自治体広報に掲載される募集情報に申し込む形が一般的です。

定員がある場合も多いので、関心のある方は情報収集を早めに行うと良いでしょう。もし周囲に経験者がいれば体験談を聞いてみるのも参考になります。

特に初めて参加する際は不安もあると思いますが、「保育をお願いできるのか」「費用はどのくらいか」など気になる点は事前に問い合わせればきちんと教えてもらえます。

勇気を出して一歩踏み出せば、きっと温かく迎えてもらえるはずですよ。

まとめ

まとめ

ペアレントトレーニングは、子どもの発達特性や問題行動への対応法を親が主体的に学ぶためのプログラムです。

親御さん自身が変わることで子どもの行動に良い変化を促し、結果的に親子双方が笑顔になることを目指しています。

決して「これさえ受ければ子育ての悩みが魔法のように全て消える」ような万能薬ではありませんが、「何が正解かわからない…」と一人で抱え込んでしまう状況を改善し、子育てに前向きに取り組むきっかけを与えてくれるでしょう。

未就学〜小学生のお子さんの子育てで悩んでいる方、専門機関から受講を勧められ迷っている方は、ぜひペアレントトレーニングへの参加を検討してみてください。

同じ悩みを持つ仲間と出会い、専門家から学べる貴重な機会ですので、きっと「受けて良かった」と感じられるはずです。

悩みが少しでも軽くなり、親子の毎日が今より笑顔で満たされることを願っています。

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